地域の小児医療を支える病院への転職。
「埼玉県から地域の小児医療を担って欲しい」との要請があり、昨年の8月に小児科を立ち上げたイムス富士見総合病院。その立ち上げメンバーとして参加した安田浩美さんは、「この地域から入院施設のある小児科の撤退が相次ぐ中で、何とかして地域全体の小児を助けなければと思っていました」と転職の思いを語ってくれた。安田さんはそれまでも他の病院で小児から成人のあらゆる診療科を経験してきた。「小児は内科・外科関係なくさまざまな疾患を看る幅の広い診療科です。今までの長いキャリアが今の仕事を助けてくれています」。
小児科の看護師には、患児によってそれぞれ違う成長発達段階を踏まえて、どのように関わっていくかを考えて、臨機応変に対応していけるだけの豊富な知識と経験が重要となる。患児が思いを言葉で伝えられないこともあるためご家族との関係構築がその後の治療に対する姿勢にも影響する。突然の入院に動揺するご家族の精神的なフォローも看護師の大切な役割のひとつである。
また小児科では、急性期の治療が終わり退院した後も定期的な検査や治療が必要となるケースが少なくない。「小児の時から一緒に治療してきた子が成人になっても医師を頼って診察に来ます。長いおつきあいになりますから、繋がりも強くなります」と安田さん。
どんな言葉よりも、そばにいる安心感。
喘息発作のある患児が修学旅行へ行くことになり、不安そうな表情をしているのを見て、「この日は私病院にいるから、もし発作が出たら電話していいよ」と思わず声をかけたという。当日「どの薬だったかわからなくなっちゃった」と旅行先から電話がかかってきたが、すべてを把握している安田さんの遠隔指導によって事なきを得たというエピソードからも、どれほど頼りにされているのかが伝わってくる。病院を離れても必要とされる仕事のやりがいは大きいことだろう。
反面、つらいこともある。高度医療を受けるために大学病院などへ転院をしなければならない場合、その告知を医師と同席して行う。先の長い治療を思うと胸が痛むという。「最近はインターネットなどである程度の情報は探せますし、ご家族はそれをどこまで調べていて、足りない情報は何なのか、そして、今何が大切なことなのかを考え、ご家族や患児と接する時、難しさを感じます」と言う。それでも「私もそうですがつらい時には、どんな言葉よりもそばにいてその時を一緒に過ごしてくれることが安心感につながり、大切なことだと思います」。近くで見守ってきたからこそわかり合える空気のようなものを共有したいとも付け足してくれた。そして最後に「患児やご家族の不安な思いを理解し、少しでも気持ちに寄り添えるように心がけています」と語る安田さんの表情には、小児を守るという強い意志が表れていた。
安田 浩美さん
2012年8月入職
7階病棟・小児科勤務 主任
以前担当していた方が当院で受診をされて、何年かぶりに再会した時に「ここにいたの、安田さん。やっと見つけた!」と言われて、とても驚いたのと同時に、名前まで覚えていてくれたことが嬉しかったです。小児疾患は急性期から慢性期まで長く関わります。だからこそ患者さんとそのご家族との間に真の信頼関係が築けてはじめて、私たち看護師を受け入れてもらえます。その点が難しくもあり、手応えのある仕事だと思います。
一人ひとり違う患児の状態を病棟スタッフと情報共有する
1日のスケジュール
イムス富士見総合病院
〒354-0021 埼玉県富士見市大字鶴馬1967-1
担当/総務課 髙田
TEL(049)254-1295(直)
http://www.ims.gr.jp/fujimisougou/
e-mail : turuse.soumu2@ims.gr.jp
2009年3月にイムス富士見総合病院と名称を改め、IMS(イムス)グループの仲間入りを果たした。地域住民、地域医療機関と密着した医療を展開し、24時間救急患者さんを受け入れている地域の中核病院である。特に小児医療では数少ない入院施設をもつ病院として地域の方々から頼りにされている。
ここの看護に注目!
小児科ではあらゆる疾患を看ることが求められ、幅広い疾患の知識と患児の発達段階を考慮した看護が必要となる。またご家族とも情報を共有しながら、突然の入院や治療に対する不安を軽減するための関わりも大切な看護ポイントとなる。同院は地域医療における小児の2次救急を24時間・365日受け入れており、また近隣の医療機関との連携も大切にしているため紹介患者さんも多い。看護師としては、何よりも患児が元気になって退院していく姿にやりがいを感じられる。時には可愛い手紙をもらうこともある。
主要疾患:
小児疾患すべて 特に川崎病、肺炎など