素早く情報収集をし一つの手術に集中。
「手術室看護って本当に楽しいんです。患者さんをお待たせしないで済みますし、手術が始まると、一人の患者さん、一つの手術に集中することができます」と語るのは、鎌ケ谷総合病院手術室主任の田村さつきさん。手術室看護に携わり10年になる。総合病院のため、さまざまな診療科の患者さんに関われることも魅力の一つだという。
もちろん、個別の対応や膨大な種類の器械を覚えなければならない大変さはある。「同じ疾患をお持ちの患者さんでも、合併症の有無によって術式は異なりますし、執刀医によって好みの器具がありますから、それらを術前の限られた時間で確認します」と田村さん。心臓血管外科などの特殊な手術の場合は、事前に医師とのシミュレーションがあるが、改めて全員で確認する時間がさほどとれない手術もある。そんな時には、必要と思われる情報を、医師や先輩たちから素早く収集できる小回りのよさが求められる。緊急手術も多いことから、何をすべきかの判断力と瞬発力も必要だ。
一歩先を読む目配り気配り。
緊張している患者さんには少しでも気持ちを和らげてもらうため、麻酔が効くまで手を握ったり、声をかけながら身体に触れるようにしたりと、きめ細かな気遣いも欠かせない。
手術が始まれば、全体の進行や患者さんの様子、スタッフ全員に気を配りながら動く『外回り』、先を読んで素早く器械を手渡していく『器械出し』など、担当によって役割は異なるが、手術を無事に終わらせるという一つの目標に向かって、チームで進んでいくことになる。
田村さんは言う。「患者さんはもちろんですが、手術に関わるすべての人を看護するような気持ちで臨みます。一歩先を読んで動くことが、手術時間の短縮、つまり患者さんの低侵襲につながりますから、勉強は欠かせません」。
院内で「手術室の看護師さんですよね」と患者さんから声をかけられることもあるという。「『こんなに元気になったんだ』って、すごくうれしくなります」と、笑顔で語る田村さん。一方で、麻酔から覚めた直後の患者さんからの「ありがとう」には、安住しないようにしているのだそう。「患者さんは麻酔下にいますから、言葉のフィードバックからだけですと、次の改善につながりづらい部分があります。課題を自分たちで見つけていくために、今後は一つひとつの手術をもっとていねいに振り返ることをしていきたいですね」。
田村 さつきさん
2009年8月入職
手術室勤務
「迷った時には患者さんを中心に考えると、おのずと答えが出てくる」。これは、私が手術室の主任になりたての頃、看護部長に言われた言葉です。どの手術に誰を配置するか、あの判断は正しかったのかなど、いろいろ考えてしまっていた頃に元手術室の看護部長だった部長から言っていただき、吹っ切れました。
1日のスケジュール
鎌ケ谷総合病院
〒273-0121 千葉県鎌ケ谷市初富929-6
担当/副院長兼看護部長 日高みえ子
TEL(047)498-8787(直)
http://www.kamagaya-hp.jp/
e-mail : kango@kamagaya-hp.jp
2007年に、地域の救急医療を担う総合病院として開設された。病床数248床、7:1の看護体制で千葉県西部地区のメディカルセンターとして、がん治療に力を入れるほか、心臓治療センターの創設、人工関節センターや脳血管治療センターの強化などを行なっている。2012年にはロボット支援手術システムダヴィンチを導入。主に前立腺がん治療に活用している。
ここの看護に注目!
あらゆる診療科からの手術依頼があり、1日平均約20件の手術が行われているため、看護師は疾患や術式、器械についての幅広い知識が求められる。第一に患者さんの安全の確保、そして手術時間の短縮のための動き、厳重な無菌操作、器材の管理等、集中力と先を読むための材料となる知識、瞬発力も重要となる。
主要疾患:一般外科、整形外科、脳神経外科、泌尿器科、口腔外科、眼科、形成外科、心臓血管外科の手術適応となるほとんどの疾患