笑顔と傾聴を忘れず、話しやすい環境づくりを。
『笑顔・声かけ・思いやり』を大切にした心のかよった看護を目指している麻生総合病院の南館2F病棟。そこで働く須山美幸さんは、看護師10年のキャリアを持つ。「実は私、2年間看護の仕事から離れたことがあって、戻ってきたんです」と語る。一度離れたからこそ見えた看護という仕事の良さは、自分の行ったことへの反応が良くも悪くも直接返ってくることだという。日々病気と闘う患者さんとご家族は、感情を持ち、言葉や表情、身体を使い、その思いを須山さんたち看護師に伝えてくる。時には、言葉にならない表情やいつもとは違う反応などを観察し、ちょっとした変化を見逃さないように患者さんに寄り添う。そうした支援によって、患者さん本来の姿に戻す援助の一端を担えることがやりがいとなり、喜びもひとしおになるという。須山さんは今、高齢者に対する看護ケアを中心に、病棟スタッフたちをまとめる主任の役割も担っている。
「ご高齢の方は、加齢とともに下肢の筋力が低下し、さらに視野障害や聴力障害、認知機能の低下に伴い、転倒・転落のリスクが高まります。入院中に事故がないように細心の注意をはらっています」。例えば排泄行動に関して、患者さんからの訴えを待つのではなく、個々の排泄パターンを把握し、時間を見計らって排尿誘導するのもそのひとつ。急性期病棟ということもあり、忙しさはあるものの、患者さんの前ではそういった姿を見せないように心がけ、ベッドサイドへ行った時には笑顔を忘れない須山さん。そして患者さんの声に傾聴する姿勢を忘れず、患者さんの想いが表出しやすい環境づくりにも取り組んでいる。
残存機能を活かすために見守ることも大切な看護。
須山さんには、新人の頃先輩から言われた一言が心に残っている。「何でもかんでも手を出しちゃ駄目」。それはやる気がみなぎっていた新人時代に、患者さんの役に立ちたいという想いから、すぐに手を差し伸べてしまっていた時に言われた言葉だった。高齢の患者さんの残存機能を活かすために、できることは患者さんにやってもらい、見守る姿勢も大切だということを教わったそうだ。また、2F病棟は内科・外科・泌尿器科の混合病棟のため対象疾患も多く、多分野の知識と技術が必要になる。専門書籍を購入し自分なりにノートにまとめたり、病棟では定期的に勉強会も開催したりしている。「その都度テーマを募り開催するのですが、看護師だけでなく、医師にも講義を担当してもらいます。専門的なことや書籍には載っていない疑問点などを解決する良い機会となっています」と、勉強にも意欲的だ。
須山さんは、高齢者への看護を通じて『患者さんとご家族の絆』の深さを感じる時がある。ご家族が懸命に看護する姿から、家族としてのあり方や人間としての魅力を学ぶこともあるという。一度は看護の現場から離れた須山さんだが、「もう看護師を辞めることはないと思います」と語った笑顔の向こうに、看護師としての意志の強さを感じた。
週3回開催する病棟カンファレンスでは、情報共有はもとよりケアの方向性の見直しを、チームで行っている。
須山 美幸さん
2013年8月入職
南館2F(外科、内科、泌尿器科混合)病棟勤務
1日のスケジュール
麻生総合病院
〒215-0021 神奈川県川崎市麻生区上麻生6-25-1
担当/管理本部総務課 重松
TEL(044)986-0942(直)
http://www.souseikai.net/web/general/section/nurse/
e-mail : soumu@souseikai.net
麻生総合病院は川崎市北部に位置し、地域の中核医療施設としての機能を持つ病院である。この地域は大学病院も多く、最新の医療情勢や医療技術に関して情報交換を密に行いながら、患者さんの病状によっては連携もとれるような体制が作られている。法人内には急性期病院だけでなく回復期リハビリテーション病院や訪問看護ステーションなどを有し、患者さんのためのトータルケアが可能となっている。
ここの看護に注目!
入院によって『安静・点滴加療』といったケースが多々あるが、高齢者の場合、安静によって筋力低下が進みADLが低下することが多い。いかにADLを落とさないかが高齢者看護では大切になる。ADLが落ちてしまったら家族の介護量が増え、自宅に退院できなくなる可能性もある。そうならぬよう、患者さん一人ひとりがその人らしく生きられるような看護の提供が求められる。
主要疾患:
高齢者の肺炎・心不全、胃・大腸癌の手術適応患者、術後の化学療法目的患者