複数の病気をもち、診断のつかない患者さんへのケア。
医療が高度化・専門化する一方で、複数の病気をもつ患者さんやなかなか診断のつかない患者さんを診る総合内科の重要性が見直されている。埼玉協同病院の総合内科で働く木村友美さんは、「主に糖尿病による合併症をもつ患者さんや脳梗塞・脳出血、腎臓病の患者さんを看ています。担当する疾患は幅広いので覚えることも多いですが、看護の基本となる考え方や視点、行動はどの科も共通しています」と語る。同院は急性期病院であることから重症度や介護度が高い患者さんの入院も多い。病棟では、入院時からすでに退院後を視野に入れ、より多くの方の入院希望に応えられるようにコメディカルスタッフと連携しながら退院支援をしている。木村さんは、入職から5年間勤務した消化器病棟での経験を活かし、この病棟での看護にも臨機応変に対応している様子。「以前の病棟にがんの認定看護師の先輩がいて、疾患だけでなく患者さんとご家族の思いにも目を向けることを教えていただき、とても役立っています」と、先輩看護師から受けた指導を今の病棟で実践しながら、看護に活かしている。
本当に理解できているか? 本音は話せているか?
救急搬送されてきた患者さんが一命を取りとめ、意思疎通ができるようになった際に「生きてて、良かった」と感謝の言葉を述べられたり、回復リハビリ病棟を経て退院する際に「命がつながり、退院できる喜びでいっぱいです。ありがとう」とごあいさつに来られたりすると、この病棟での役割を果たしたやりがいを感じるという。これは、日々何人もの入退院の患者さんを見守る中で、一人ひとりの患者さんへの看護を一つずつ積み上げているからこそ感じられることだろう。
病棟では毎日、午前11時30分からナースカンファレンスを行い、患者さんごとの看護計画を見直し、退院に向けた支援をしている。患者さんにそれらの説明をする時などに木村さんは、『本当に理解できているか?』という点に留意しながら相手の返事や表情を観察する。「こちらからの説明に患者さんが“はい”と返事をされても、後から確認すると意外に理解できていないこともあります。言葉だけでなく心に落ちているかが大切です」。また、検温などをした後に、「何か気がかりはありますか?」と、ひと言付け加えることもしている。「不安はありませんか?」と直接的な聞き方をすると、患者さんは「はい、ありません」と答えてしまうが、広い意味を込めた言葉でなら、病気以外の不安なことや本音を口にする人が多いそうだ。患者さんやそのご家族からいかに本当の情報を聞き出せるかは、看護師の力量にかかっている。看護経験から生まれる「おや?」という気づきも働かせながら、患者さんの声に傾聴する木村さんだった。
木村 友美さん
2009年4月入職
総合内科(ICU含む)病棟勤務
総合内科へ配属となり間もない頃、私の手を握りしめて「あなたに最期、看てもらえてよかった」とご家族の方から言われたひと言を大切にしています。その方は前の病棟でも担当した患者さんのご家族で、回復が難しく今の病棟の個室で静かに最期までの時間を過ごされることになっての転科でした。慣れない病棟での不安を私がいたことで軽減でき、安心してもらえたことは嬉しかったです。
さまざまな疾患の知識が必要となる総合内科では、ドクターによる疾患勉強会も頻繁に行われる
1日のスケジュール
埼玉協同病院
〒333-0831 埼玉県川口市木曽呂1317
担当/本部保健看護部看護課
TEL(048)294-6111(代)
http://www.mcp-saitama.or.jp/
e-mail : kangakusei@mcp-saitama.or.jp
1978年の開院以来、一貫して無差別・平等の医療・介護の実現を追求する地域の中核病院として、急性期から回復期、そして在宅医療までを提供している。いのちのはじまりから最期の瞬間まで、健康のあらゆるステージに関わり、その人らしい生き方を支え続けたいとの考えから、他職種でのチーム医療に取り組み、多彩なフィールドで活躍できる看護師の育成に取り組んでいる。WHOが提唱するヘルスプロモーション活動(HPH)に登録し、実践している。
ここの看護に注目!
緊急度の高いICUの患者さんから、循環器・糖尿病・腎臓病・脳梗塞・脳出血など血管障害のある患者さんまで幅広い層を看なければならない総合内科では、説明と同意を丁寧に行いながら早期治療・早期退院へと継続したケアが提供できることが大切である。退院時には患者さんが暮らす地域サービスを最大限に取り入れるための知識も必要となる。
主要疾患:
狭心症・糖尿病・腎臓病・脳卒中 など