患者さんの人生に寄り添い、治療を支援。
宮城県立がんセンター呼吸器科に勤務する佐々木晴美さんは、新卒の頃からおよそ15年間がん看護一筋に取り組んできた。そこまで佐々木さんを惹きつけるがん看護の魅力について、「自分ではない誰かの人生についてこんなにも深く考えられ、〝人が生きる〟とはということを学ばせていただける点が魅力であり、やりがいです」と、語ってくれた。
現在勤務する病棟には、肺がんの患者さんが多く入院されているが、比較的若く進行が早いケースも多い。がんに関する知識やケアの技術が身に付いていることはもちろん、患者さんとの信頼関係や、いかに患者さんの人生に寄り添えるかが重要だという。「まず、患者さんの家庭や社会での役割を確認します。治療をするうえでは入院が望ましくても、仕事や家庭内での役割があれば、外来で治療できる方法を模索します」と佐々木さん。
治療はもちろんそんな話し合いにも、患者さんやご家族との信頼関係は大切だ。再発、転移や増悪により入退院を繰り返す患者さんも多いなか、佐々木さんは特に初回入院の方には、まず信頼関係の構築を第一に考えているという。「なるべく自分の言葉で話し、患者さんが話してくださったことは記録として残し、医師を含めみんなで共有します」。
新しい情報・知識を収集する努力は必須。
がんセンターという性質上、がんに関するあらゆる治療が行われる。看護の役割も多彩だ。手術を受ける患者さんであれば、呼吸器科では術前術後の呼吸訓練を行うことも看護師の役目だ。化学療法や放射線治療であれば、身近にいる者として、患者さんの不安を軽減するためにさまざまな情報提供をしなければならない。
看護師チームでの毎日のチームカンファレンス、毎週1回の医師や多職種を交えたカンファレンス、必要に応じて行われる情報交換からの情報収集はもちろん、研修などでの新たな知識の習得も、佐々木さんは積極的に行っている。「最新のがん治療や自分の興味ある分野の研修には、休みを利用して参加したり、院内の研修にも積極的に参加しています。知っているといないとでは患者さんに提供できる情報が違います」と言う。新人の頃を振り返ると「知っていたらこのようにアドバイスできたのに……」と思う、その悔しさが佐々木さんの原動力の一つでもある。
「がん看護は退院がゴールではありません。その先、患者さんやご家族ががんとともにどう生きていかれるのか、そこまでを退院までの期間に一緒に考えていくことが大切です」。今、ご家族への支援や終末期医療にも興味を広げる佐々木さんは、今後もがん看護を追求していきたい考えだ。
佐々木 晴美さん
2005年3月入職
3階東(呼吸器科)病棟勤務
実習で受け持ったあるがんの患者さんが亡くなる数時間前、「自分(患者さん)から逃げるな」とおっしゃいました。学生だった当時は厳しい状況の患者さんにしっかりと向き合う心構えがまだできておらず、病室から足が遠のいてしまうことがあったのです。それ以来『逃げないこと』は私のテーマのひとつでもあります。
1日のスケジュール
宮城県立がんセンター
〒981-1293 宮城県名取市愛島塩手字野田山47-1
担当/教育担当副部長 門間京子
TEL(022)384-3151
http://www.miyagi-pho.jp/mcc/
e-mail : momma-ky282@miyagi-pho.jp
1967年に宮城県立成人病センターとして開設。1993年に宮城県立がんセンターに名称変更するとともに研究所を新設。2011年4月には地方独立行政法人化し再スタートを切った。都道府県がん診療連携拠点病院として治療・予防・研究の中枢的な役割を担っている。
ここの看護に注目!
がん治療に特化した医療機関のため、最新のがん治療の知識から、在宅医療、緩和ケア、終末期医療まで幅広い知識を要する。さまざまな痛みや苦しみを訴える患者さんに対して的確な症状マネジメントを行い、多職種と連携し症状コントロールを図ることが重要。患者さんの精神的な支援、家族への支援も必要となる。
主要疾患:急性期・慢性期・終末期呼吸器疾患(肺がん、胸腔内腫瘍、胸膜中皮腫)など