母子の命を同時に守る助産師の責任は重い。
神奈川県横浜市にある済生会横浜市南部病院。その産婦人科で助産師として働くYさん。助産師になったきっかけは、出産の幸せで温かい雰囲気に感動したことだ。妊娠期間を経てようやく出産した時は、本人も家族も助産師も、すべての人が生命の誕生に感動する瞬間だ。そんな出産をサポートできる助産師の仕事は、楽しくもあるが責任は重大。中でも分娩期は想像以上に大変である。正常な分娩であれば問題はないが、異常が見られた場合、すぐに医師を呼ばなければならない。正常か異常か、その判断をするのはYさんたち助産師の役割となる。判断を少しでも間違うと生命の危機につながりかねない。分娩は1例1例が異なり、何例経験しても慣れてはいけないと常日頃から心がけているYさん。担当する時は常に初心にかえり、緊張感を持って行動している。
「赤ちゃんが元気でもお母さんが元気でなければ、赤ちゃんはうまく成長できません。二人を同時に元気にすることが大事です」とYさんは言う。時には帝王切開という道を選ばなければならないケースもある。「帝王切開をお産の失敗ととらえてしまうお母さんがいます。しかし、それは違います。でも中には育児に自信をなくしてしまう方もいらっしゃいます。そうならないためにも、妊娠期間からしっかりお腹の赤ちゃんを育ててきたこと、痛い思いをして元気な赤ちゃんを産んだことを伝え、立派な母親であることを理解してもらうようにしています」。Yさんは、お母さんが笑顔になれるまで、ていねいなフォローを心がけているという。
不安や悩み事を心から共有できる助産師でいたい。
よくある事例だったり、心配のない内容だったりしても、当たり前のこととせずに親身になって対応をしていくというYさん。妊娠中や産後、精神的にも不安定になる気持ちを共有できる助産師でありたいという。「相手の気持ちを受け止める姿勢を大切にしたい」と意識しながら、コミュニケーションを取る。また、同じフロアには婦人科系の疾患を患い、手術が成功したとしても心に傷を残す方も入院している。昨日と変わった点はないかと確認しながら、表情が硬い、口数が少ない、声のトーンが違う、などを感じた場合、Yさんは必ず声かけをする。そうすると、心に抱えているものを少しずつ語り出す方が多い。まずはそれに気づいて傾聴することが重要。細やかな観察力がなければできないことだ。
しかし、当然だがうまくいくことばかりではない。時には落ち込んでしまうこともある。そんな時には先輩がかけてくれた言葉を思い出すそうだ。「この事例はYさんが乗り越えるためのものだったのでは?」。先輩はそう言ってくれた。自分たちはさまざま経験を積んで成長していく。そのために必要な試練だったと思うことで、前向きになれるのだ。今後、自分もこのような言葉かけができる先輩になりたいという。穏やかでやわらかい雰囲気を持つ一方で、理性的で芯の強さを感じさせるYさん。女性のライフステージの中でも特に重大な時に深くかかわる助産師として、常に真摯に取り組んでいる姿は非常に心強かった。
悩んだり、分からないことがあれば、すぐに相談にのれる先輩でありたいと考えるYさん。後輩への指導にはわかりやすさを心がけている
R・Yさん
2014年4月入職
東3階(産婦人科)病棟勤務
1日のスケジュール
済生会横浜市南部病院
〒234-0054 神奈川県横浜市港南区港南台3-2-10
担当/人事課
TEL(045)832-1111(代)
http://www.nanbu.saiseikai.or.jp/nurse/
e-mail : saiyo@nanbu.saiseikai.or.jp
1983(昭和58)年に開院した済生会横浜市南部病院は、急性期の病院としてその役割を担うとともに、救急医療、小児医療、周産期医療などを充実し、質の高い医療を提供している。さらに、訪問看護ステーションや地域ケアプラザを設置し、地域医療の連携を実現。2003年には横浜市で初の地域医療支援病院の認定を受けた。地域の方々が満足できる医療を実現するために、スタッフ一人ひとりがプロフェッショナルであることを認識し、質の高い医療・看護を実践している。
特に求められる能力
主要疾患:
妊娠、分娩、産褥期、婦人科疾患など