看護師のひと言で、
患者さんを元気づける。
「患者さんは、入院するだけで精神的な負担が大きくてストレスだと思います。だから患者さんにはなるべく笑顔で入院生活を送ってもらえるようケアをしています」。東京都葛飾区にあるイムス葛飾ハートセンターで働いている谷川美香さんは、子どもの頃の入院経験から、こう語る。日々の看護で気を付けていることは、「看護師の言動ひとつで患者さんやご家族を傷つけてしまうこともありますから、表情や目線、声のトーンには特に注意をしています」。その甲斐あってか「いつも元気だね、あなたがいるとすぐにわかるね」と、患者さんから言われることも多いそうだ。
同院に入院してくる患者さんは、50歳以上の方が多いが、谷川さんとは親子以上に年齢が離れている方には、どうしても声をかけるタイミングが難しい。「術後に痛みを我慢することは良いことではないので、それを言ってもらえない方は、表情や血圧、脈拍などから私たちが『気づく力』が必要です」と。以前、何か変!と感じた谷川さんがある術後の患者さんに、「実は痛いんじゃないですか?」と声をかけると、「痛いけど我慢できる」と言われ、慌てて薬を勧めたことがあった。どこまでを察して、どのように声をかけるのかは、経験を重ねても難しいという。生命に直結する危険性のある循環器疾患の場合、特に『気づく力』が大切になる。
術後の創感染で生命の危機に陥った患者さんが、6ヵ月後には、明るく歩いて退院されていく姿を見ると谷川さんは、「緊急オペのできる病院だからこそ、救えた命、救えた患者さんがいることは素晴らしいことで、そこに関われる看護師という仕事に誇りをもちたい」と、ハツラツとした笑顔で語る。
患者さんの1日も早い回復を
チーム医療スタッフ全員で願う。
循環器科の疾患は『=心臓』と思われがちだが、そうとは限らない。原因となる疾患が生活習慣からくるものも多いという。入院患者さんの中には糖尿病などで食事制限のある方もいる。日常になっている食事習慣を改善することは、なかなか難しい。谷川さんは、「病院食と食べ比べてもらって、塩分の多さを実感してもらったり、入院してきた頃の苦しかったことを思い起こしてもらうなど、専門的な言葉を使うよりは日常の風景を思い描けるような声かけを心がけています」と言う。より分かりやすい言葉で、一人ひとりの患者さんと向き合って根気強く会話する。病棟には薬剤師も配属されており、ベッドサイドまで行って服薬指導を担当することもある。このように同院には職種に関係なく、患者さんの早い回復という目標に向かって、多職種が一丸となって協力し合える環境とスタッフ間のチームワークが取れている。
看護師は、外来、救急外来、オペ室、ICU、病棟に分かれて勤務しているが、24時間365日緊急の患者さんを受け入れているので、いつ緊急の患者さんが運び込まれて来るかわからない。夜間でも緊急手術には対応するという。術後の患者さんはICUに入るが、それでもベッドが確保できなければ、谷川さんの働く病棟で受け入れることもある。
「ICUから手術後1病日〜2病日のリハ開始後でもシリンジ類で数種加療中の方が入床してきます。いかなる時も対応できるように、勉強は欠かせません」という谷川さんの自己研鑽は、これからも続いていくことだろう。
谷川 美香さん
2013年2月入職
病棟勤務
「あなたが来るとこちらまで元気になります」。普段から明るく笑顔であいさつすることを心がけていたので、この言葉をいただいた時は、とても嬉しかったです。心不全や手術後の経過が不安定だったりすると、日に日に表情が暗くなっていく方がいらっしゃるのですが、いつも患者さんの近くにいる私たち看護師だからこそ、かけられるひと言があると思うのです。患者さんご本人が一番頑張られているので、少しでも元気になってもらえたらいいですね。
スタッフからの相談には、できる限り丁寧に答えるようにしているという谷川さん。笑顔も忘れない
1日のスケジュール
イムス葛飾ハートセンター
〒124-0006 東京都葛飾区堀切3-30-1
担当/総務課 採用担当
TEL(03)3694-8118(直)
http://www.ims.gr.jp/heartcenter/
e-mail : soumu.hear@ims.gr.jp
2009年にイムスグループの新葛飾病院から分離独立して開院した循環器の専門病院。東京都CCUネットワーク、急性大動脈スーパーネットワーク重点病院として循環器急性疾患の加療に特化して、重症患者さんを365日24時間受け入れている。手術室2室、カテーテル室2室、病床数50床で、医師28名、ME14名、薬剤師8名、看護師107名がチーム医療を担っている。7:1の手厚い看護を提供し、看護師は患者さん中心で看護介入できる環境が整っている。
ここの看護に注目!
循環器疾患の中でも重症な患者さんが多いため、心電図モニターのモニタリング、バイタル変動のチェック、緊急対応力、転倒転落リスクの回避など多方面からの観察力と、その後の推察力が患者さんの回復には重要となる。ちょっとした変化を見落とさないためには、医師や薬剤師など専門スタッフが講師となって行う勉強会などに参加して常に最新の知識を収集する必要がある。
主要疾患:
AP_狭心症心筋梗塞、CHF_心不全、弁膜症_大動脈弁、僧帽弁のもの、DA_大動脈解離、TAA_胸部大動脈瘤、AAA_腹部大動脈瘤、不整脈 など