なぜその治療を選ぶのか、目的を確認することから。
白血病や悪性リンパ腫などの血液疾患の患者さんが入院する血液内科病棟。中村香織さんは、看護師になってからずっと、永寿総合病院で血液疾患の患者さんの看護に携わっている。3年前にはがん化学療法看護認定看護師も取得。抗がん剤治療を受ける患者さんの意思決定支援から、骨髄移植や退院後までを視野に入れた看護を続ける。
「消化器がんなどでは治療計画がほとんど決まっていますが、血液疾患の場合は薬の種類がかなり豊富なこともあり、患者さんが治療について何を重視したいのかを丁寧に聴きながら意思決定支援を行っています」。血液内科の看護で大切にしていることを聞くと、まずこんな答えが最初に返ってきた。
病棟での検査や治療が、安全・安楽に計画に沿って進むための介助や支援はもちろん、そもそもどうしてその治療をするのか目的を共有することが、長い目で見た時に患者さんの力になるからだ。「身体に抗がん剤が入ると、多かれ少なかれ副作用が出ます。その時にこういう理由で自分が選んだという気持ちが治療を乗り越える際の拠り所になるんです」。
副作用が多少強く出ても完治を目指したいのか、高齢のため副作用をなるべく少なくしたいのか、通院回数が多くても大丈夫かなど、患者さんにとって大切にしていることや生活背景を聴きながらよりよい選択を一緒に考える。中村さんたち看護師は、この過程で聞き取ったことをカンファレンスなどで医師に伝えるようにしている。
入院中から退院後を見据えて情報提供する。
治療が始まると、安全に治療を完遂できるように、副作用に気を配りながらも、退院後の外来治療に向けての働きかけをすることになる。
「入院中にその人に出やすい副作用をよく観察し、コントロールの方法を医師と相談して、退院後のご自宅での対処の仕方なども覚えていただけるようにお伝えしています」と中村さん。高齢の方や、忙しく働いている方の場合、ギリギリまでがまんしてしまうことも多いため、「こんな症状が出たら病院に連絡してくださいね」と、一言添えることも忘れないという。
退院後の継続した治療を考えると、外来化学療法室の看護師との連携も重要だ。電子カルテの掲示板に、患者さんの副作用の特徴などを書いて伝えたり、外来へ出向いて、「最近困っていることない?」と、スタッフに直接声をかける。そして、認定看護師の活動日としてフリーで動ける週1〜2日は外来治療を受ける患者さんの相談にのったりもしている。
そんな中村さんが最近病棟でチャレンジしているのは、薬剤投与の管理システムづくりだ。「治療の選択肢が複数ある分、投与方法もさまざまです。それでもある程度の傾向はありますから、この薬剤にはこのルート、という形でまとめていって、少しでもシンプルな投与管理ができればと思っています」。安全で安楽な治療というのは、もちろん患者さんにとって効果的で副作用が少ないこと。そしてスタッフにとっても負担が少ないことが条件だと中村さんは考え、その方法を仲間と一緒に探っている最中だ。
退院調整にも力を入れており、カンファレンスは多職種が参加。患者さん一人ひとりについて情報や意見の交換が活発に行われる
中村 香織さん
2010年4月入職
8階西(血液内科)病棟勤務
1日のスケジュール
永寿総合病院
〒110-8645 東京都台東区東上野2-23-16
担当/人事課
TEL(03)3833-8389(直)
http://www.eijuhp.com
e-mail : eiju@eijuhp.com
台東区という東京都内でも有数の高齢化の進んだ地域の中核病院としての役割を担う400床の急性期病院。1956年に元浅草稲荷町で160床の病院としてスタートし、1965年に総合病院となる。その後、2002年に上野駅にも近い現在の地に400床の総合病院として移転した。2012年4月には公益財団法人として認可され、療養医療・回復期リハビリテーション機能を中心とした柳橋分院(80床)と一体となって、地域医療に力を入れている。『活動年齢を永らしめ、幸福な長寿に貢献する』を理念に診療を行っている。
特に求められる能力
主要疾患:
白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など