個々の経過を見守り安全な分娩へ導く。
助産師の眞下広美さんは、「周産期の看護に大切なことは?」という問いに、次のように答えた。「待つことでしょうか。『してさしあげる』と押し付けるのではなく、お母さん自身の力が自然に引き出されるまでじっくり関わることです」。
勤務している足利赤十字病院は地域の中核病院であり、地域周産期母子医療センターであることから、ハイリスクの妊産婦も受け入れているが、眞下さんが助産師になってから約2年で担当した50例ほどのお産は、ほぼ正常分娩だという。しかし、陣痛によりパニックになったり、子育ての不安で精神的に不安定になってしまったりする妊産婦も多い。そんな一人ひとりに対し、少しでも主体的にお産に向き合えるよう支援をしている。
「外来へ下りて、検診にいらした妊婦さんの教育支援をしたり、病棟では不安が強い方のお話を聞いたり、痛みが強い時には腰をさすってそばについていたり、呼吸法を指導するなど、少しでも不安を和らげられるようにしています」。
もちろん、異常が疑われる場合には医師に相談することは必須だ。また、帝王切開が予定されている妊産婦の精神的支援も行う。
出産後にも授乳支援や母親学級という役目。
周産期に関わる看護師や助産師の役割は、決して出産がゴールではない。核家族や兄弟の少ない世代のため、新生児を抱いたことがなかったり、身近にちょっとした子育ての相談をする人がいない妊産婦も多い中、育児支援も大切な役目だ。「首の座らない児の抱っこの仕方から始まりますから、私たちの役割は広がっているといえますね」と眞下さんは言う。
出産によりホルモンバランスが激変する産褥期は、気持ちが落ち込みがちで、授乳がうまくいかないなどで自信を失ってしまう母親もいる。「授乳のたびに訪問し、乳頭の形や赤ちゃんの意欲で違ってくることをご説明しながら、プラスに考えられるような支援をします」と眞下さん。そして、退院後も母乳外来や母親学級で指導をしていくことになる。
生命の誕生に携わる緊張感と責任を感じつつも、無事産まれたときの喜びは何ものにも代え難いという。それは、何度分娩介助に携わっても変わらない。「母親ってすごいなと思いますし、同性として勉強になります」。
「まだ自分自身は出産を経験していませんので、経験している先輩の接し方をよく観察して、振り返りの時に意見をもらったりしています」と言う眞下さんは、今後もお産に関わりながら、自分がさらに追求していきたい道を見定めていくつもりだ。
眞下 広美さん
2004年4月入職
産婦人科病棟勤務
助産師学校へ通い始める前の1年間、看護師として産婦人科に勤務しました。その時に関わった患者さんが退院される時に、お手紙をくださったのが印 象的です。授乳がうまくいかず、夜も頻回に訪問していた方でした。お手紙には「おかげでがんばることができました」とあり、助産師になりたいという想いを改めて確認できました。
1日のスケジュール
足利赤十字病院
〒326-0843 栃木県足利市五十部町284-1
担当/人事課
TEL(0284)21-0121
http://www.ashikaga.jrc.or.jp/
email:jinjika@ashikaga.jrc.or.jp
1949年に23床でスタートし、現在は医療圏人口80万人を対象とする555床の中核病院となっている。2011年に、プライバシーが保たれた快適な療養空間の観点から設計された、一般病棟全室個室という新病院に全面移転した。新病院は赤十字の使命である災害対応も視野に入れた免震構造で、非常用発電や地下水濾過装置なども備えている。
ここの看護に注目!
妊娠期の定期検診から関わり、正常分娩の場合入院から退院までの約1週間という短期間で実質的な介助のほか、妊産婦を精神面からも支える。助産師は母親学級も担当する。地域周産期母子医療センターとして、ハイリスクの妊産婦や緊急帝王切開の患者さんも入院するため、産婦人科だけでなく、小児科の医師との連携も重要。
主要疾患:産科[分娩、帝王切開、切迫早産など]
婦人科[良性腫瘍(子宮筋腫、卵巣のう腫など)、悪性腫瘍(子宮がん、卵巣がん)など]