子どもとの信頼関係を築くプレパレーション。
岡山医療センターの小児病棟に勤務する西浪友美さんは、副看護師長であり、小児救急看護の認定看護師としての役割を担う看護師である。看護師になってからずっと小児看護の経験を積んできた。急変も早く、回復も早い、そんな小児看護の魅力は、子どもたちが元気になって帰っていく姿を見ること。最初は口もきいてくれなかった子どもが、退院後に「ランドセルを見せたかった」と病棟に来てくれることもある。子どもの成長過程を見ることができるのも、小児看護のやりがいにつながる。しかしそうなるまでには、信頼関係がとても大事である。
大人でも治療は怖いもの。子どもにとっては恐怖でしかないだろう。それを緩和するのがプレパレーション(子どもにも検査や治療の大切さをわかるように説明することで、不安や恐怖心を軽減し、子どもなりの心の準備を支えること)だ。点滴や採血がとても苦手だったある4歳の女児。西浪さんは点滴をする際に消毒綿と駆血帯を触ってもらい、治療内容と注意点を丁寧に伝えた。「最初は痛いけれど動かないでね。でも痛い時は泣いてもいいからね」と西浪さん。女児は「がんばれそう。泣いてもいいんだよね」と言いながら、動かずに辛抱したそうだ。治療が恐怖体験ではなく成功体験として心に残るとともに、前向きに治療と向き合うことができるようになった。母親に「チックン痛かったけど、がんばれた」と報告する子どもの姿を見て西浪さんは、子どもの思いに寄り添った看護の大切さと看護師の関わり方の重要性を実感したという。
観察力を養うためにも学習が大切。
小児看護において看護師の観察力は子どもの生命を左右するほど重要だ。笑顔が少ない、表情が暗いなど、いつもとは違う『何か』を感じ取ることや、母親の話す内容を聞き逃さないこと。熱や脈拍、呼吸数、バイタルの数値から判断し、前兆を見逃さないことが大切になる。観察力は経験を積むことで磨かれることもあるが、バイタルの数値から判断することは新人でもできる。「そのためには学習が必要。学ぶ意志が大切です」と西浪さん。認定看護師として勉強を続けてきた言葉には説得力がある。現在では西浪さんに刺激されてドクター主催の小児救急シミュレーション勉強会に看護師たちが参加している。また、西浪さんは認定看護師として、院外の市民講座等で小児の事故防止やホームケアの勉強会を実施している。これを院内の子どもを持つ職員にも実施したところ、核家族化で家に相談する相手がいない職員たちから、『非常に役に立った』と好評だったという。
「子どもがくれるパワーは本当に大きいです。一緒にいると若くなれますよ(笑)」。西浪さんはこう続ける。「看護を仕事だからと捉えるのではなく、看護をすることが楽しいと思うことで成長するのだと思います」。看護知識や技術だけでなく、後輩へ仕事の取り組み姿勢を指導することも前を歩く先輩としての大きな役割。患者さんや家族はもちろん、仲間や後輩を支え、見守っていくことでまわりが明るく元気になっている。そして自分自身も「看護が楽しい」とやわらかい笑顔で語る西浪さん。子どもたちから元気をもらい、そして西浪さん自身が多くの人たちに『やる気』と『元気』を与えているに違いない。
話しやすい職場の中で、看護師が伸びやかに仕事ができる環境づくりを常に心がけている西浪さん
西浪 友美さん
2010年4月入職
6階B(小児)病棟勤務
1日のスケジュール
国立病院機構 岡山医療センター
〒701-1192 岡山県岡山市北区田益1711-1
担当/管理課 濱田満也
TEL(086)294-9911
http://okayamamc.jp/index.php
e-mail : kyuyo@okayamamc.jp
急性期を担う総合病院として地域の住民に医療を提供している岡山医療センター。地域医療支援病院、総合周産期母子医療センター、地域がん診療連携拠点病院、地域災害拠点病院としての役割を担い、高度医療を実践している。また、国立病院機構として難易度の高い医療を行うとともに、医師研修の実施や重症患者に対する診療を実施。各診療科、各職種が連携を取りながら、チームで患者さんに関わっている。院内は、バリアフリーの対応も充実し、患者さんの安心と安全を追求し、患者さんに寄り添った医療と看護を展開している地域の実力派病院である。
特に求められる能力
主要疾患:
小児内科(呼吸器疾患・川崎病・急性胃腸炎・各種検査入院:下垂体機能など)
小児外科(鼠径ヘルニア・停留精巣・膀胱尿管逆流症・胆管炎・胃軸捻転・虫垂炎など)