Pick Up Hospital
NST・緩和ケアチーム・褥瘡委員会・訪問看護etc…さまざまなナースによるさまざまな看護のカタチを徹底レポート!
※掲載されているデータは取材当時のものです
Pick Up Hospital 24 [ 2015.3 ]
地域の『高度慢性期医療』の要請にこたえ
急性期病院と地域をつなぐ看護を展開。
医療技術や在宅療養のためのサービスの充実、介護技術の進歩により、退院後、治療を続けながら地域で過ごす人たちも増えている。そんな中、埼玉セントラル病院の医療型療養病棟では、従来の慢性期医療に比べ医療依存度の高い患者さんも受け入れ、在宅や地域の施設への移行までを支える役割を担っている。急性期病院の後方支援となるような『高度慢性期医療』に力を入れている病院である。平成25年4月には訪問リハビリテーション、7月には訪問看護を開始するなど、訪問系のサービスも手厚く整備。病棟ではこれらとタイアップしながら、その人らしい人生を歩むためにご家族や地域の社会資源との調整までを含めた幅広い看護を提供することを目指している。また、患者さんにとって時には最期を迎える場所となるため、最期までその人らしい生き方を全うできるお手伝いをしているという。
医療型療養病棟師長で看護部教育責任者の神田直孝さんと、同病棟で2年目を迎えた看護師の伊豫田理沙さんに、医療型療養病棟の看護の特徴とやりがいについてお話を伺った。
埼玉セントラル病院
▲病院外観
〒354-0045 埼玉県入間郡三芳町上富2177
TEL:049-259-0161(代)
URL:
http://www.ims.gr.jp/saitama_central/
■開設/1981年3月
■院長/新美 紀雄
■看護部長/佐々木加奈子
■病床数/450床(回復期リハビリテーション病棟48床、特殊疾患病棟48床、精神療養病棟96床、認知症病棟104床、医療型療養病棟154床)
■診療科目/内科、心療内科、リハビリテーション科
■看護配置/13:1(回復期リハビリテーション病棟)、
20:1(療養病棟、特殊疾患病棟、認知症治療病棟)、
30:1(精神療養病棟)
■入院患者/420名(1日平均)
■関連施設/イムス三芳総合病院、イムス富士見総合病院、埼玉ロイヤルケアセンター、イムスケアふじみの
■交通案内/東武東上線ふじみ野駅下車 西口ライフバス停(ふじみ野駅西口発~上富・セントラル病院・三芳役場経由~鶴瀬駅西口折返し線)より『埼玉セントラル病院前』下車、東武東上線鶴瀬駅下車 西口ライフバス停(鶴瀬駅西口発~三芳役場・上富・セントラル病院経由~ふじみ野駅西口折返し線)より『埼玉セントラル病院前』下車
▲談話室
▲病室
埼玉セントラル病院医療型療養病棟の特徴は?
医療型療養病棟における看護とは?
- 医療型療養病棟師長
看護部教育責任者
実習指導者
神田 直孝
- 看護師
2014年4月入職
伊豫田理沙
埼玉セントラル病院の医療型療養病棟の特徴を教えてください。
(Median編集部)
- 神田
急性期病院の在院日数が短縮される中で、急性期の治療を終えられても、治療を継続しなければならない患者さんや、専門的なケアが必要な方は多くいらっしゃいます。たとえば人工呼吸器を装着されていたり、透析を必要とされる患者さんたちです。そういった方々のために、医療型療養病棟には、人工呼吸器を導入し、透析を行える設備を整えるなどして、従来は転院先を見つけるのが難しかった患者さんも幅広く受け入れられる点が大きな特徴です。
どのような体制で看護を提供しているのでしょうか?
- 神田
-
当院の医療型療養病棟は機能によって3つに分かれています。亜急性期に近い緊急性の高い患者さんのための病棟、在宅復帰支援に向けての療養病棟、そして、人工透析が必要な重症患者さんのための病棟です。そこで、患者さんの病態にあわせた医療と看護を提供しています。緊急性の高い患者さんのための病棟に入られた時点から、ご本人やご家族の意向をよくお聞きし、調整しながら、病状が落ち着けば在宅復帰支援に向けての療養病棟へと移っていただき、無理なく地域へのつなぎを行っています。
また、回復に向かわれる患者さんがいらっしゃる一方で、最期を迎えられる患者さんもいらっしゃいますので、必要に応じてターミナルケアも行える体制を整えています。
新人看護師はここでどのように育っていくことができますか?
- 神田
入職後は集合研修を行い、基礎的な技術や知識の振り返りを行います。その後、医療型療養病棟に配属されてからは、急性期に近い領域から、さらに地域やご自宅への復帰までの看護を、2〜3年かけて一通り経験することができます。急性期病院ほど在院日数が短くないため、患者さん一人ひとりの経過を詳細に把握しながら看護を展開している先輩たちと一緒に、学びを深めることも可能です。
また、当院に限って言えば、さまざまな分野で急性期医療の経験を持つ医師が多く勤務しています。そのため、医療チームの一員として、慢性期の病棟では得られないと思われがちな医療面に関わる看護のスキルや知識を積み上げていけるでしょう。
2014年4月から、医療型慢性期病棟で働いている伊豫田理沙さんに、ここでの看護のやりがいや将来の目標について伺いました。
現在の病棟で働いてみて、よかったと思うことは?
- 伊豫田
もともと介護福祉士として働いていましたが、看護師の資格を取得したことで、医療チームの一員として治療に参加し、介護職の経験を生かしながら、より患者さんの苦しみを軽減するようなお手伝いができることを、とてもうれしく感じます。
慢性期というと、どちらかというとゆったりしたイメージがありますが、当院の医療型慢性期病棟は、常に動きがある病棟です。そのような中で、疾患の知識が必要となるのはもちろんですが、患者さんのご希望や周辺環境を捉え、ご家族ともお話をしながら看護を行える点が、働く側にとってもモチベーションにつながっています。
患者さんやご家族と話をする時間が比較的取りやすいので、会話の中から学ぶことも多く、患者さんのために必要な看護をじっくり行うことができていると思います。
日々どのようなことを大切に、看護実践に取り組んでいますか?
- 伊豫田
さまざまな疾患をお持ちの方が入院されてきますから、その方に合った関わり方を、毎日模索しています。1年目で感じたことは、教科書通りの患者さんはいらっしゃらないということです。急性期と違い、クリティカルパスも存在しない分、患者さんの背景をよく知り、医療・看護のチームで話し合いをしながら、その時、その方に必要な看護を提供しています。そのためには、コミュニケーションもとても重要です。先輩はとても気さくで話しかけやすい方ばかりで、病棟の雰囲気もよく、自分で調べても分からないことは遠慮せずに聞くことができるのが本当にありがたいですね。
今後どのような看護師を目指しますか?
- 伊豫田
医療機器を複数装着されている重症の患者さんもいらっしゃるので、そばにいる私たち看護師のちょっとした気づきが非常に重要だと感じています。先輩たちは、バイタルの数値、聴診音、表情やしぐさなどから情報を得て、私がまだ気づくことのできない変化に気づいてすぐに行動してくれます。私も先輩のように、広い視野でアセスメントできる力を身につけていきたいと考えています。
そして、退院へ向けた情報交換や調整等の経験も積んで、患者さんやご家族だけでなく、地域にお住まいの方や連携先の医療・介護職の人たちからも頼りにされる看護師になりたいです。
入職前は、慢性期病棟では、医療的な技術や知識を学べないのではないかと不安もあった伊豫田さん。しかし、埼玉セントラル病院の医療型療養病棟では、そんな心配はまったくいらなかったという。新人教育では学校で習った技術の振り返りを行っている点も、この病院に入職できてよかったことの一つとして挙げている。
一方で、緩和ケアの体制や、訪問系のサービスなども整うこの病院で、在宅復帰を支援するなど幅広い経験をしながら、地域の方々の療養生活や健康維持を支える看護師の一人に成長していってほしい。