Pick Up Hospital

NST・緩和ケアチーム・褥瘡委員会・訪問看護etc…さまざまなナースによるさまざまな看護のカタチを徹底レポート!
※掲載されているデータは取材当時のものです
Pick Up Hospital 11 [ 2011.5 ]
東京ワークライフバランス認定企業に選ばれた東京病院。
看護師が働きがいのある組織を目指す看護部の思いとは?
東京都中野区で長年地域医療を担ってきた慈生会病院を引き継ぎ、2010年4月にリニューアルオープンした東京病院。急性期病床と回復期病床を合わせて250床を擁し地域の基幹病院を目指している。『すべては患者さんのために』というグループ理念の下、働くスタッフのワークライフバランスを考えた労働環境の整備によって、2010年には『東京ワークライフバランス認定病院』に認定された。同院が考える『ワークライフバランス』とはどのようなものなのか、総看護師長 中島美津子さん、東京人材開発本部長 諸橋泰夫さんにお話を伺った。
南東北グループ 医療法人財団 健貢会 東京病院
▲東京病院完成予想図
▲笑顔で大集合
〒165-8906 東京都中野区江古田3-15-2
TEL:03-3387-5421
URL:
http://www.tokyo-hospital.com/
■開 設 年/2010年4月
■理 事 長/渡邉 貞義
■総看護師長/中島 美津子
■病 床 数/250床に増床予定
■職 員 数/360名
■診療科目/内科、神経内科、小児科、脳神経外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、眼科、歯科・口腔外科、耳鼻咽喉科、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、外科、精神科、整形外科、麻酔科、心療内科、リハビリテーション科、放射線科
■看護配置/実質配置10 : 1
■関連施設/南東北グループ7法人、5病院、11診療所・クリニック、7介護老人保健施設、3特別養護老人ホーム、3身体障害者療護施設、2ケアハウス
■交通案内/JR中野駅北口江古田の森行きバス「東京病院」下車徒歩0分、
JR中野駅北口中村橋行きバス「下徳田橋」下車徒歩1分、
JR中野駅北口江古田駅行きバス「地域センター」下車徒歩5分、
地下鉄都営大江戸線「新江古田駅」下車A2出口徒歩約12分、
西武新宿線・・・「沼袋駅」下車徒歩約15分

▲外来

▲おしゃれな看護職員寮

▲東京総合保健福祉センター
『江古田の森』

▲2012年開院予定
『新百合ヶ丘総合病院』
さまざまな働き方があっていい!! そんな思いに応えてくれる東京病院。

- 総看護師長
中島美津子さん

- 東京人材開発本部
本部長
諸橋泰夫さん

- 看護師
池田百合子さん
この度の東日本大震災では、甚大な被害を生む結果となりましたが、貴グループの被災状況、救援活動はいかがでしたでしょうか?(Median編集部)
- 諸橋

東京人材開発本部 本部長 諸橋泰夫
福島県郡山市にある総合南東北病院の陽子線治療機器やPET、MRI、CTなどは地震発生後も正常に稼働し、その地域で一番早く診療を再開できた病院でした。震災後は、同院と福島市の南東北福島病院が拠点となり、震度6強に見舞われた宮城県岩沼市の総合南東北病院まで、水、食料、医薬品、医療機器、オムツなどをトラックで夜を徹して運搬しました。救援物資の搬送が迅速に行えたことで、多くの患者さんの救援にあたれたのだと思います。東京病院でも震災翌日には、救援物資をワゴン車に積んで第一便が出発していました。その後も不足している物資を10tトラックで何台も運び、グループ一丸となって患者さんへの対応を行いました。
また、被害の大きかった南三陸町へは郡山の総合南東北病院の医師と看護師5名がチームを組んで支援に出かけ、1週間滞在し、被災された方々の診療・治療を行ってきました。今までにない震災に遭遇し、その中でできる限りの救援をしてきたと思います。
ご自分たちも被災者なのに、人命救助、災害医療への取り組みは大変なことだったと思います。
- 諸橋
- 残念ながら総合南東北病院では、1人の職員が津波の犠牲になったほか、30人の職員の家族も津波の犠牲者となってしまいましたことはとても残念で、ご冥福をお祈りするばかりです。
当グループはISOの認定を受けており、病院には3日分の備蓄はありましたし、メディコンパスクラブという会員の皆さんからも多くの支援をいただきました。お互い様という姿勢で、物資を送っていただいたり、トラックを出していただいたりできたことが、本当に有り難かったです。
東京病院も古い建物には壁にひびが入り、1病棟は一旦別の病棟へ避難しましたが、今は元の病棟へ戻ることができました。
では、本題の貴院が考える『理想のワークライフバランス』を教えてください。
- 中島

総看護師長 中島美津子
一般的に言われる『ワークライフバランス』とは、仕事と生活の調和が取れていて、その両方が充実していることです。勤務時間の短縮、育児や介護支援の充実、残業がない、夜勤が少ないなど目先の制度が整っているかどうかに目が行きがちですが、それでは視野の狭い範囲でしかワークライフバランスをとらえていないと思います。そうするとどうしても、『ワーク』と『ライフ』を天秤にかける発想になりかねません。でも私たちは専門職として生涯、仕事を続けることができるので、その長いスパンの中で、自分のスキルをいつ、どのように患者さんに提供できるかを考えて、自分のライフステージごとにうまく『ワーク』との距離をとって働き続けることだと思います。
そのために必要なことは何でしょうか?
- 中島

自分がなぜこの仕事を選んだのか、この仕事の何にやりがいを感じるのかなど、自分のキャリアプランをしっかり確立していることだと思います。我々は医師の指示のもとプロとして看護を提供しているわけだから、自分がこの患者さんにこのケアをしたいと思ってする残業ならば自分の中で悶々としたものは残らないのだけれど、自分の中でプロ意識が欠けて単なる作業ロボットとしてケアを提供していると、残業をさせられているというとらえ方になってしまいます。逆に言うとまだ自己アイデンティティーを醸成中の人たちは、ある程度しんどいかも知れなませんが、しっかり固まるまで一生懸命働いてみる、その組織に染まってみることは重要だと思います。
様々な角度から多くの支援制度を整えていらっしゃいますが、中でも注目すべき制度を教えてください。
- 中島

当院の制度は、2010年に『東京ワークライフバランス認定企業』の中で、『多様な勤務形態導入部門』として認定されました。今、取り入れているのは、個人に合わせた20種類以上の『ライフスタイルに合わせた勤務時間制度』、5時からホリデイという『日勤常勤制度』、その逆の『夜勤常勤制度』、休日に公開セミナーや学会活動に参加するとエコポイントがつく『職員点数制度』、看護師資格取得支援制度の『NS4』、幼児保育+学童保育の『キッズルーム』、親睦会などです。
中でも『キッズルーム』で、小学校3年生までを対象としている点は特徴だと思います。『小1ショック』と言って、小学校1年生は学校から帰って来る時間も早く、日勤帯で働いて帰っていては間に合わないことが多いため、そこで挫折する看護師も多いんです。その点、うちのキッズルームでは資格取得者が常勤で働いていますから安心して働けます。
制度を運営するにあたって職場での協力体制など実際の現場の方々の声はいかがでしょうか?
- 中島

この制度の運営の鍵を握っているのは、病棟師長です。現に変則勤務で働きたいというニーズはあって、経営側も受け入れたいという病院は、全国にたくさんあります。でも実現できない病院も多い。それは現場が柔軟に、その人を活かす働き方を受け入れられるかどうかではないでしょうか。下手をすると「1日に3時間の人はいりません」「忙しい時間帯になる前に帰る人ね」というねたみのような発言があるとも聞いています。当院でもはじめは疑問視する声はありました。でもこの制度のメリットを「すべては患者さんのため」という視点で何度も繰り返し話しました。すると受け入れてみようかとなり、実際に受け入れてみると「1日1時間でもすごく助かる」ということがわかってきて、病棟全体で受け入れていこうという雰囲気が出てきました。最初に師長が受け入れないとスタッフには馴染んでいきません。その点、当院の場合リニューアルオープンという時期だったことで、新しい師長さんも多く、柔軟に対応してくれたことが功を奏したと思います。
このワークライフバランスの制度を通して、看護師の方に期待することはどのようなことでしょうか?
- 中島

実際に利用している人は、子育て中の人はもちろん、離職中の人が仕事復帰をしたいけれど最初は日勤だけ働く、趣味の染め物を昼間習うために夜間専従として働くなど、様々な働き方をしています。私は「看護馬鹿になって欲しくない」と思っています。看護以外の人生経験はすべて臨床に活かせます。看護師倫理綱領にも書かれていますが、私たちは『個人としての品行を常に高く維持して』看護にあたることが大切なのです。そのロールモデルの先輩が現場にいることはとても刺激になりますし、看護の質の向上につながると考えています。ですからこの制度を使って、病院にいろいろな価値観や文化を持ち込んできて欲しいという思いがあります。
実際にこの制度を利用された方の声をお聞かせください。
- 池田

看護師 池田百合子さんと
息子の琉星くん
夜勤とかがあると主人と生活リズムが違ってくるので、なるべく合わせたいと思い、ここには夜勤のない日勤常勤があると聞いてとてもいい制度だと思って入職しました。今は病院が開設しているキッズルームに子どもを預けています。ここでなら子どもに社会性を身につけさせることもできますし、自分も近くにいますので、安心して働けています。プライベートが充実すると仕事を頑張ろうという気持ちになります。
以上のように新しい取り組みに積極的な貴院ですが、最後にこれからの病院の向かう方向性などをお話しいただけますでしょうか?
- 中島

当院が目指しているのは、『エクセレントホスピタル』です。世界のリーディングホスピタルとして、世界標準を当院から発信したいと思っています。専門職集団として、働きがいのある組織になれば、医療の質が伴ってきて、また人が集まってきます。そのようなマグネットホスピタルとしての効果も期待しています。そして看護師が集まってくるだけでなく、その後組織内で自律心を培っていって、アウトカムとしての看護の質が高まっていきます。そんな好循環が生まれる病院を目指していきたいですね。
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仕事もプライベートも充実したいと思うのは誰でも同じこと。でもそのバランスがとれているかどうかは個人の主観によるところが大きい。だからそれぞれのニーズに応えてくれる組織はそう多くないだろう。今回訪問した東京病院には、個人のニーズにこたえるだけの受け皿の大きさを感じた。こんな病院なら働きがいがあり、活き活き働けることだろう。