Pick Up Hospital

NST・緩和ケアチーム・褥瘡委員会・訪問看護etc…さまざまなナースによるさまざまな看護のカタチを徹底レポート!
※掲載されているデータは取材当時のものです
Pick Up Hospital 18 [ 2013.7 ]
人間味のある看護師に育てたい。
それができる環境づくりと新人看護師への思い。
看護師にとって新人教育というのは、看護師を続けていけるかどうか、またその後の看護師としての仕事のやり方や希望などにつながる大切な教育である。特に板橋中央総合病院のような地域の中核病院において看護師には大きな期待がかかる。その期待に応えられる看護師になるためには、まずは最初の1歩が肝心だ。その最初の重要な時期をどのようにサポートし、どのように成長させていくかについて、教育担当師長の岡野さんに、そして、実際にどのような教育を受け、どう勉強してきたかを看護師の大谷彩乃さんにお話を伺った。
IMSグループ 板橋中央総合病院
▲病院外観
〒174-0051 東京都板橋区小豆沢2-12-7
TEL(03)3967-1181(代)
URL:
http://www.ims-itabashi.jp/kango/
■開設/昭和31年3月1日
■院長/新見能成
■看護部長/橋本明美
■病床数/579床
■職員数/1,300名
■診療科目/内科、呼吸器科、消化器科、循環器科、外科、整形外科、脳神経外科、腎臓外科、心臓血管外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、麻酔科、リハビリテーション科、形成外科、リウマチ科
■看護配置/実質配置7:1
■外来患者/1,300名(1日平均)
■入院患者/430名(1日平均)
■附属施設/訪問看護ステーション、ヘルパーステーション、iタワークリニック、板橋セントラルクリニック、蓮根ロイヤルクリニック、附属看護学校
■認定看護師/救急看護認定看護師、皮膚・排泄ケア認定看護師、がん化学療法看護認定看護師、手術看護認定看護師、緩和ケア認定看護師、感染管理認定看護師
■交通案内/都営地下鉄三田線『志村坂上駅』下車、徒歩1分(東京駅より約29分)
新人教育において大切にしていることは何か?
新人看護師に安心感を与え、やる気を起こさせるチームワーク。

- 教育担当師長
岡野和子

- 看護師 大谷彩乃
2012年入職
整形外科病棟勤務
石川県立看護大学卒業
新人教育の内容・特徴について教えてください(Median編集部)
- 岡野
-
新人教育の基本はOJTによって個人のペースに合わせた教育をすることです。学生から社会人になったばかりの新人ナースたちは、分からないことばかりです。スタッフの顔も知らなければ、物品の位置や病院内のことについても分かりません。まずは、あいさつなどの接遇面から社会人としての常識を学び、病院のことについて知ってもらいます。
病棟に配属されてからは、プリセプターを中心に新人をチーム全体でフォローします。プリセプターだけに任せるのではなく、全員が新人ナースを見ていることで、新人が迷わないような体制づくりをしています。
特徴の一つとして、ローテーション研修があります。内科に配属されてしまうと外科の処置ができなくなる、ということもありますから、一つの診療科だけではなく他の診療科の経験ができるようにしています。救急部門やオペ室の体験もできますよ。
また、7月には看取りの看護についての研修があります。看護師にとって“死”は避けて通れないものです。それをどう乗り越えていくか、また家族に対する対応などについて学ぶ研修です。
新人教育において大切にしていることは何ですか?
- 岡野

研修風景
人間を育てる、ということです。
患者さんから「ありがとう」と感謝されること、「あなたに看護をしてもらってよかった、うれしかった」と言われることは看護師にとってとてもうれしいことです。患者さんから名前を覚えてもらえて、感謝される看護師になるには、人を思いやることが大切です。
患者さんを自分の家族だと思い、患者さんが何を求めているのか、どう感じているか、常に考えることができる看護師になってほしいです。
新人教育において心がけていることは何ですか?
- 岡野

先輩ナースと新人ナース
成長に合わせた教育を心がけています。仕事を始めるとできる人、できない人、というレベルの差が出てきてしまいますから、それを感じさせないようにすることも必要です。チェックリストなどを活用し、一人ひとりのレベルを把握して、その人に合わせた指導をするようにしています。『自分はできない』と思うとあせってしまいますから、できないことを把握したうえで、あせらせないように、その人のペースを考えて、できることから始める、という指導をするようにしています。できないことも、あらゆる方法で試してみて、できる方法を見つける、といった柔軟性のある教育を心がけています。
また、不安を感じさせず、安心して知識や技術を習得してもらうことが重要だと考えています。地方から来ている看護師も多いですから、孤独を感じないように病棟全体でフォローするようにしています。
安心感を持って仕事ができるようにしてあげたいですね。
安心感を与えるためにはどのようなことを実践していますか?
- 岡野

「ほっとする時間」の様子
研修の中では「ほっとする時間」を設けています。週に1回勤務時間内に新人看護師が集まって、お菓子を食べながらおしゃべりする時間です。たったそれだけのことなんですが、不安や緊張を強いられている新人看護師にとってはとても心が和む時間です。
一応、悪口は言わないこと(笑)としていますが、愚痴は出るでしょうね。でも、そんな本音を言うことで、みんなが同じ気持ちでがんばっているんだ、と実感します。1週間のうちに経験した“あんなこと”や“こんなこと”を好きなようにしゃべるだけで楽しく、またみんなからの新鮮な話を聞くこともできます。それが自分では感じていなかったかもしれないストレスを解消することにもつながります。
不安が少しでも解消され、明日からも元気にがんばろう、という気持ちになる大切な時間になってくれればと思っています。
「ほっとする時間」は3ヵ月続きます。
日常生活において安心を与えるために心がけていることは?
- 岡野

プリセプターとプリセプティ
病棟においてはプリセプターが中心となって新人看護師の指導にあたりますが、プリセプターが常に勤務が一緒だとはかぎりません。そのときは他の先輩がその新人について指導をするようにしています。
新人看護師のことはいつでも、誰かが見守る、という環境をつくっています。最初は病棟のことも何も分からないわけですから、抱えている不安は大きいものです。新人看護師が少しでも安心感を持って業務を覚えられるよう、サポート体制をしっかりしておくことが大切ですよね。
自分としては、廊下などで会ったら声をかけるようにしています。きちんと名前を覚えるようにして、表情に変化はないか、何か困っていないか、などを見て何か感じ取ったら、担当に伝えるようにしています。深くかかわりすぎないように気をつけ、適度な距離感を保ちながら、見守っていきたいですね。
プリセプター制度において配慮していることなどは?
- 岡野

新人ナースと先輩ナース
教育委員会では『共に学ぶ』をモットーにしています。プリセプターの立場になると、自分が分からない、と言えないプレッシャーを感じてしまうことがあります。しかし、分からないことは新人看護師と一緒に学ぶ、といった気持ちでいることが自分を成長させていくのだと思います。
プリセプター研修などでは、そういった悩みを打ち明けられる時間を設け、プリセプター自身がストレスを溜めないよう、安心して新人看護師の指導にあたれるような教育をしています。
実際のところを、看護師の大谷さんから話を聞いてみてください。
プリセプター制度はどのように良かったですか?
- 大谷

看護師 大谷彩乃さん
プリセプターの先輩には分からないことなどを積極的に聞ける雰囲気だったので、何でも聞くことができました。チームメンバーとも馴染みやすかったので、仕事もしやすかったですよ。
新人の頃は分からないことも多く不安がいっぱいでしたが、プリセプターの先輩がプライベート面においても相談できたので、安心感がありました。仕事面だけでなく、全体を見てくれている先輩がいるのは心強かったですね。話をする機会も多く、プリセプターとプリセプティの絆は強かったです。
教育制度や内容においてよかったと感じたことは?
- 大谷

病棟での様子
実践を踏まえて指導してくれたので、分かりやすかったですね。注射の研修やポジショニングなど、プロジェクターや講義形式だけでなく実践で行うものは体を動かしながら理解していったので、覚えやすかったです。
また、「ほっとする時間」では他の病棟の同期とのつながりができるので、同期同士がとても仲良くなれました。悩みを相談したり、休日に遊んだり、時には同じ病棟の同期には相談しにくいことも相談できることもあるので、同期同士のつながりは大切だと思います。
大谷さんはどんな看護師になりたいですか?
- 大谷

仕事風景
患者さんから「あなたなら任せられる」と思われる看護師になりたいですね。笑顔が素敵な看護師でもありたいです。患者さんが話しかけやすく、親しみやすい雰囲気を作れる看護師でいたいと思います。

板橋中央総合病院のような地域の中核病院のスタッフは、それだけ高い質が求められる。患者さんからの期待も大きい。その期待や要望に応えられる看護師になるためには、それだけの教育制度や環境が必要だ。板橋中央総合病院には充実した教育制度、教育カリキュラムがある。
しかし、それだけでは人をみていくことが必要な看護師は育たない。人として人と関わる看護師を育てるためには、やはり、人として指導すること、人として思いやりのある目でスタッフを見つめ、育てていくことが大切なのだ。それは時間も手間もかかること。しかしここには、それを惜しまずに、当たり前のこととしてスタッフを育成する環境がある。そんな人のぬくもりを感じながら看護師として成長できる。板橋中央総合病院は、そんな病院だ。