Pick Up Hospital

NST・緩和ケアチーム・褥瘡委員会・訪問看護etc…さまざまなナースによるさまざまな看護のカタチを徹底レポート!
※掲載されているデータは取材当時のものです
Pick Up Hospital 16 [ 2012.12 ]
循環器の急性期病院としての役割を担い、
その中で専門性を追求しながら患者様を支える看護師たち。
循環器の専門病院としての役割をはじめ、そこで働く看護師の役割について、循環器看護のやりがいや難しさ、イムス葛飾ハートセンターの看護の特徴やセンターの魅力を紹介。隺見看護部長からは地域の中での役割や看護部の目指すところを、また、循環器看護に携わって5年のキャリアを持つ松永有紀さんに、循環器看護について看護の実際や患者様に対する思い、ケアに対する考え方、センターの雰囲気や働きやすさなどについて、お話を伺った。
イムス葛飾ハートセンター
▲外観写真
▲手術室
〒124-0006 東京都葛飾区堀切3-30-1
TEL:03-3694-8100
URL:
http://www.ims.gr.jp/heartcenter/
■開 設 年/2009年3月
■病 床 数/50床(ICU・CCU 8床、HCU 12床、個室 6床、3人室 24床)
■職 員 数/200名
■診療科目/心臓血管外科、循環器内科、麻酔科
■看護配置/7:1入院基本料、特定集中治療室管理料1
■医療施設環境/手術室 2室、心臓カテーテル室 2室、救急処置室、診察室、心疾患リハビリルーム、64列マルチスライスCT、検査室、ICU・CCU・HCU
■手術実績/冠動脈造影(CAG):約125件/月、冠動脈治療(PCI):約50件/月、手術件数:約50件/月
■関連病院/34病院[北海道、東北(宮城、山形)、関東(埼玉、群馬、千葉、東京、神奈川)]、介護老人保健施設15施設
〈急性期病院〉
板橋中央総合病院、高島中央総合病院、新葛飾病院、明理会中央病院、イムス記念病院、イムス三芳総合病院、イムス富士見総合病院、新松戸中央総合病院、行徳総合病院、春日部中央総合病院、三愛会総合病院、太田福島総合病院、横浜旭中央総合病院、横浜新都市脳神経外科病院、東戸塚記念病院、琴似ロイヤル病院、東京腎泌尿器科センター大和病院、横浜宮崎脳神経外科病院
〈亜急性期・回復期病院〉
イムス板橋リハビリテーション病院、佐原中央病院、埼玉みさと総合リハビリテーション病院、新戸塚病院、手稲ロイヤル病院
〈慢性期病院〉
埼玉セントラル病院、西八王子病院、新越谷病院、鶴川サナトリウム病院、北小田原病院、江田記念病院、相原病院、西仙台病院、山形ロイヤル病院、道南ロイヤル病院
■交通案内/
・京成本線「堀切菖蒲園駅」下車、徒歩9分
・地下鉄千代田線「綾瀬駅」もしくはJR総武線「新小岩駅」からバス約20分
循環器の専門看護師に求められるものは何か?
循環器の専門性を追求するためのスタッフの揺るぎない思いとケア。

- 看護部長
隺見康子さん

- 看護師
松村有紀さん
循環器専門病院として目指す看護とは?(Median編集部)
- 隺見
イムス葛飾ハートセンターは循環器専門病院です。しかしながら、循環器=心臓、という概念にとらわれることなく、生活習慣病の予防から再発防止につながるトータルケアにアプローチができるよう、専門性を極めて安全安心なやさしい看護の提供をしていきたいと思っています。
そのために、私共は循環器看護に魅力を感じている看護師が、やりがいを持って楽しく働ける職場作り、循環器が未経験でも「勉強したい」という熱意で循環器のスキルアップができる病院であること、そして循環器看護が大好きなママさんナースの子育て支援に柔軟に対応できる職場作りを実践しています。
循環器専門の看護師になりたい人に求められるものは何ですか?
- 隺見
専門職が研鑚意欲を持ち、患者様のすべての場面において、相互理解のもと、最大限のパフォーマンスを発揮していかなければいけません。外来、救急外来、手術室、集中治療室、病棟、それぞれの場所で相互理解のもと、医療チームの一員として、看護の役割は患者様の安全を重視したマネージメントコーディネーターとして、とても重要なものです。
看護師はその中で一緒に働く看護師や医療チームと協調し、さらに組織としての競争ができることが大切。数多くの命を救いたい、地域のみなさまに信頼される医療を提供したい、そんな熱いハートを持つ看護師が求められます。
今回は、そんな熱いハートを持つ看護師、松永有紀さんにその熱意を語ってもらいましょう。
貴院の循環器看護の特徴を教えてください。
- 松永


カンファレンスの様子
一つは7:1の看護が確立しているため、患者様中心で看護介入ができるということです。看護師の数が確保されているので、患者様一人ひとりをみることができますね。重症患者様への対応はもちろん、軽症になった患者様に対してはお風呂に入れることもできます。それができない場合は、ベッドサイドで頭を洗ったりすることもできますよ。循環器看護においても清潔ケアはとても大切なこと。これは看護師の数がいないとできないことですからね。
また、チームナーシングによってチーム全体で患者様を看ていること。チームの中の担当看護師が中心となり週1回のカンファレンス行い、患者様の状態を把握し、ADLの向上に努めています。
急性期なので回転が早いのですが、看護計画も3日に1回は評価をし直し、その時その状況に応じたケアができるように対応しています。
それから、ドクターとの情報交換を密に行っていることも特徴の一つです。今後の治療方針や方向性なども把握することができ、目標を持って看護ができます。
専門性のある看護をする上での新人教育においてはどのような点に注意していますか?
- 松永
プリセプター制度を基本として、病棟全体で新人をみています。
新人看護師のノートがありまして、そこに新人看護師が不安にならない程度に、今後の課題や悩みなどを書くようにしています。それを見れば、その看護師がどこまでできているのか、悩んでいることは何か、などについてみんなが把握できるようになっています。新人看護師をみんなで守る体制ができていますね。
みんな優しいですよ。頭ごなしに怒ったりする指導はしないです。手取り足取り、ていねいに指導しています。人間関係はとてもいいですから。あんまり言うと嘘みたいになってしまいますかね(笑)。でも、ホントに人間関係はいいです。
ただ、急性期なので、ゆっくりみてあげることができないこともあります。新人でも重症患者様をみてもらうこともあります。でも、もちろん、しっかりとフォローにはつくので、放り出すようなことはしません。
循環器看護師の役割として大切なことは何ですか?
- 松永
患者様の入院生活を苦痛なく送れるよう、介助していくことだと思います。入院生活という非日常の生活から、元の生活にきちんと戻れるよう、手助けをしていくこと。
そのためにも、ゆっくり話を聞くことですね。中にはドクターには直接話せないことも、私たちがワンクッションとなって聞くことができればと思います。精神的にも支えになることが大事ですね。
また、日常生活にスムーズに戻るためには退院指導が重要です。循環器の場合、退院後、苦しくなって救急要請をするというケースが多いので、そうならないための生活指導が必要です。食事の面においては、塩分制限や食事制限が必要となる場合もあるので、栄養士やまた、薬剤師も一緒に退院後の生活について指導をしています。
循環器看護の難しさは?
- 松永
循環器疾患は一つの疾患からいろいろな疾患を併発することもあるので、原因となる疾患の知識も必要とされます。現在服用している薬は何か、など現在の状況を常に把握するためにも常にアセスメントをしながら介入していかなければならない、という難しさがあります。こうなったらどうするか、など今後の予測もしながら動かなければなりません。
循環器は心臓だけの知識だと思われやすいのですが、心臓から拍出された全ての血管を含むため、知識として持っていなければばらないことがいっぱいあります。
自らの勉強のほか、先輩からのアドバイスなどもいただきながら、懸命に勉強しています。仕事と勉強の両立は大変ですが、体調管理をしながらがんばっています。
貴院の魅力について教えてください。
- 松永
人間関係がいいのが魅力の一つですが、ドクターとの関係がいいのも誇れることです。
当センターのドクターは病棟に足を運んで患者様を診てくれています。患者様の意見を聞いてくれます。
また、私たち看護師の意見にも耳を傾けてくれます。食事の形態など日常生活についてのことを聞いてきますね。患者様と直接接しているのは看護師、ということをよく理解してくれているというのは、とても仕事がしやすいことです。
疾患についてもとてもよく説明してくれるのは助かります。こちらがよく理解できるように、資料や情報を提供してくれたり、ていねいに教えてくれます。看護師とドクターとの壁がないんですね。
看護師としてのやりがいを教えてください。
- 松永
急性期ということもあり重症患者様が多く、また突然の発症に伴い、ご家族のメンタルに関わることも多いですが、少しずつでも患者様の状態が改善し、安定していくにつれ、患者様やご家族の表情に変化が見られること、小さなことでもコミュニケーションが取れたり、笑顔が見られることにやりがいを感じます。
下町のせいか患者様は気さくな方も多く、「あのときは怒っちゃってごめんね」などと言いながら笑顔を見せられると、とてもうれしい気持ちになりますよ。
大変なときは精神的に不安定な気持ちになるものです。そのような苦労したときのことを、お互いに過去のこととして笑顔で話せると、患者様の苦しかった日々が思い出になっているのだと感じ、とてもうれしく思います。
また、外来受診の際にはわざわざ会いに来てくれて、元気な姿を見せてくれるんです。それも病院の雰囲気や、下町という土地柄の魅力ですね。
松永さんの今後の課題はどのようなことですか?
- 松永
何かあったときにパッと動ける判断力のある看護師になるには、もっと知識を高めなければなりません。循環器の看護師として5年になりますが、循環器はまだまだ深く、もっともっと勉強すべきこと、やらなければならないことがたくさんあります。5年間の経験はさまざまな資格取得の条件の一つでもありますから、それを満たしたからには、今後は資格の取得にもチャレンジしていきたいですね。
専門分野に向けて自分のペースで勉強していきたいと思っています。

看護師になる前は一般の会社に勤めていたという松永さんに、「転職は正解ですか?」と聞いたら、「それは死ぬときに分かるのかもしれません」という答えが返ってきた。看護師として5年のキャリアは、普通に考えると中堅どころ。仕事に対してもさまざまな面が見えて、ある意味、自分なりの答えが出てくる頃でもあるだろう。しかし、彼女にとっての5年の経験ではまだまだ不透明な部分を感じているらしい。それだけ、専門性の深さや難しさ、簡単には答えの出ない看護師としての仕事の魅力ややりがいを感じているということだろう。
専門性を追求するということは、それだけの意志と環境が必要だ。それを兼ね備えた彼女の笑顔が、とても頼もしく感じられた。