東京アカデミーグループ　看護学生・看護師の病院就職・転職情報サイト

■ 妊娠の用語の定義

① 妊娠

妊娠とは受精卵の着床に始まり、胎芽または胎児および付属物の排出をもって終了するまでの状態。

② 妊婦

妊娠中の女性。

③ 初妊婦

初めて妊娠した女性。

④ 経妊婦

妊娠した経験のある女性。

⑤ 産婦

分娩中の女性（分娩第1〜3期までの期間にある女性）。

⑥ 初産婦

初めて分娩する女性。

⑦ 経産婦

妊娠22週以後での分娩経験のある女性。

⑧ 高年初産婦

満35歳以上の初産婦。

⑨ 若年初産婦

一般的に満19歳以下の初産婦。

⑩ 褥婦

分娩が終了し、妊娠・分娩に伴う母体のさまざまな生理的変化が妊娠前の状態に復古（回復）するまでの時期にある女性。

■ 妊娠週数別人工妊娠中絶数の割合の推移

■ 妊娠の成立

① 排卵：卵巣内で成熟した卵胞が破裂し、卵子が排出される。

② 排出された卵子が卵管内に進入する。

③ 射精

④ 精子が子宮腔をとおり、卵管内に進入する。

⑤ 受精：精子が卵の中に進入して両者の核が合一することで、卵管膨大部で行われる。

⑥ 受精卵が卵管から子宮腔内に運ばれる（約3日間）。

⑦ 着床：受精卵が正常な着床部位である子宮体部の内膜に定着し、埋没するまでの過程をいう。着床は受精後7日目前後に進行し、内細胞塊からは胎芽の分化が開始し、栄養膜は絨毛として発育分化し、hCGの分泌も始まる。

■ 若年妊娠（満19歳までの妊娠）のリスク

・望まない妊娠

・人工妊娠中絶の増加

・シングルマザー・未婚の増加

・経済的・心理的不安

・児童虐待リスクの増加

・周産期死亡率の増加

・低出生体重児の割合の増加

■ 高年妊娠（満35歳以上の妊娠）のリスク

■ 産褥体操の目的

・弛緩した腹壁、骨盤底筋群の回復を促す。

・悪露の滞留を防ぎ、子宮収縮を促す。

・乳汁の分泌を促進する。

・血液の循環を促し静脈瘤を予防する。

・疲労を回復し、リラクゼーションを図る。

■ 妊娠高血圧症候群（HDP：Hypertensive disorders of pregnancy）

(1) 病型分類

妊娠高血圧症候群の病型分類（日本産科婦人科学会）

妊娠高血圧腎症 （PE：preeclampsia）	1)妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し、かつ、蛋白尿を伴うもので、分娩12週までに正常に復する場合。 2)妊娠20週以降に初めて発症した高血圧に、蛋白尿をみとめなくても、基礎疾患のない肝機能障害、進行性の腎障害、脳卒中、神経障害、血液凝固障害のいずれかをみとめる場合で、分娩12週までに正常に復する場合。 3)妊娠20週以降に初めて発症した高血圧に、蛋白尿をみとめなくても、子宮胎盤機能不全を伴う場合。
妊娠高血圧 （GH：gestational hypertension）	妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し、分娩12週までに正常に復する場合で、かつ妊娠高血圧腎症の定義に当てはまらないもの。
加重型妊娠高血圧腎症 （SPE：superimposed preeclampsia）	1)高血圧が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降に蛋白尿、もしくは基礎疾患のない肝腎機能障害、脳卒中、神経障害、血液凝固障害のいずれかを伴う場合。 2)高血圧と蛋白尿が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降にいずれかまたは両症状が増悪する場合。 3)蛋白尿のみを呈する腎疾患が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降に高血圧が発症する場合。 4)高血圧が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降に子宮胎盤機能不全を伴う場合。
高血圧合併妊娠 （CH：chronic hypertension）	高血圧が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し、加重型妊娠高血圧腎症を発症していない場合。

(3) 妊娠高血圧症候群における高血圧と蛋白尿の診断基準

① 収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上の場合を高血圧と診断する。
② 次のいずれかに該当する場合を蛋白尿と診断する。
・24時間尿でエスバッハ法などによって300mg／日以上の蛋白尿が検出された場合。
・随時尿でP／C比が0.3mg／mg・CRE以上である場合。
③ 24時間蓄尿や随時尿でのP／C比測定のいずれも実施できない場合には、２回以上の随時尿を用いた
ペーパーテストで２回以上連続して蛋白尿１+以上陽性が検出された場合を蛋白尿と診断することを許容する。

(4) 症候による亜分類

① 重症について
次のいずれかに該当するものを重症と規定する。なお、軽傷という用語はハイリスクでない妊娠高血圧
症候群と誤解されるため、原則用いない。
・妊娠高血圧・妊娠高血圧腎症・加重型妊娠高血圧腎症・高血圧合併妊娠において、収縮期血圧が
160mmHg以上または拡張期血圧が110mmHg以上の場合。
・妊娠高血圧腎症・加重型妊娠高血圧腎症において、母体の臓器障害または子宮胎盤機能不全をみとめる場合。
※蛋白尿の多寡による重症分類は行わない。

② 発症時期による病型分類
早発型：妊娠34週未満に発症するもの
遅発型：妊娠34週以降に発症するもの
※32週で区別するという意見もある。

(5) 関連疾患

① 子癇（しかん）
妊娠20週以降に初めてけいれん発作を起こし、てんかんや二次性けいれんが否定されるものをいう。けいれん発作の起こった時期によって、妊娠子癇・分娩子癇・産褥子癇と称する。子癇は大脳皮質での可逆的な血管原性浮腫によるけいれん発作と考えられているが、後頭葉や脳幹などにも浮腫を来し、各種の中枢神経障害を呈することがある。
② 妊娠高血圧症候群に関連する中枢神経障害
皮質盲、可逆性白質脳症、高血圧に伴う脳出血及び脳血管れん縮などが含まれる。
③ HELLP症候群
HELLP症候群とは、溶血、肝酵素値上昇、血小板減少を来す症候群のことで、他の偶発合併症によるものではないものをいう。上腸間膜動脈・肝動脈のれん縮から発生すると考えられている。初発症状は、悪心、嘔吐、季肋部、心窩部痛など上腹部症状で、急速にDICや胎児の状態が悪化するため、早期に妊娠を中断する。
④ 肺水腫
妊娠高血圧症候群では血管内皮機能障害から血管透過性を亢進させ、しばしば浮腫を来す。重症例では浮腫のみでなく、肺水腫を呈する。
⑤ 周産期心筋症
心疾患の既往のなかった女性が妊娠・産褥期の突然心不全を発症し、重症例では脂肪に至る疾患である。妊娠高血圧症候群は重要なリスク因子となる。

(6) その他の合併症

常位胎盤早期剥離、血液凝固異常、網膜剥離、流・早産、低出生体重児、胎児発育不全（FGR）、妊産婦死亡、胎児死亡、胎児機能不全

■ 出生体重に基づいた新生児の呼び方

■ 在胎週数の異なる同一体重の低出生体重児の比較

■ 母体保護法

【1】不妊手術

医師は、本人および配偶者の同意を得て不妊手術を行うことができる。ただし、配偶者が知れないとき又はその意思を表示することができないときは本人の同意だけで足りる。

〈不妊手術の要件〉

① 妊娠または分娩が、母体の生命に危険を及ぼすおそれがある場合

② 現に数人の子を有し、かつ、分娩ごとに母体の健康度を著しく低下するおそれがある場合

【2】人工妊娠中絶

医師会の指定する医師は、本人および配偶者の同意を得て妊娠満22週未満まで人工妊娠中絶を実施できる。ただし、配偶者の意思表示が得られない場合は、本人の同意だけで足りる。

〈人工妊娠中絶の要件〉

① 妊娠の継続または分娩が、身体的・経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがある場合

② 暴行もしくは脅迫により姦淫されて妊娠した場合

※胎児異常を理由としての人工妊娠中絶はできない。

【3】受胎調節の実地指導

避妊具を使用する受胎調節実地指導を行うことができるのは、医師のほか、都道府県知事の指定を受けた助産師・保健師または看護師である。

【4】届け出の義務

不妊手術・人工妊娠中絶を行った医師または指定医師は都道府県知事に届出なければならない。