Close Up! 卒後教育ってどうなってるの?

さまざまなナースによる看護のカタチを徹底レポート Pick Up Hospital

病院選びのポイントとして多くの学生が注目している『卒後教育』。
入職後、現場の看護を少しずつ身につけていけるように、それぞれの病院では独自の卒後教育制度を設けています。
入職後に行われる卒後教育にはどんなものがあるのか、学んだことを実際の看護にどう活かせるのか、どのような目的で行われているのか等をこのページでしっかり理解して、将来を見据えた病院選びをしてください。

Report8

重症心身障害児(者)の特殊性を理解する1年目研修
重症児者一人ひとりのサインを理解するための観察力を身に付けることから始まる。
重症心身障害児(者)の特殊性を理解する1年目研修

重症心身障害児(者)看護の1年目研修とは

重症児者にとって、同センターは病院であると同時に生活の場でもあることから、重症心身障害児(者)の特殊性を理解し、確かな技術と感性を養う教育に重点を置いている。

目的

重症心身障害児(者)の療育に携わる看護・療育職員の基礎教育。
療育・ケアに必要な基礎知識を学び、技術を習得するための研修。

メリット

看護の基本であるコミュニケーション力を身に付けられるため、重症児者との信頼関係を築いたうえで個別性のある看護・ケアが提供できる。

Hospital data

社会福祉法人
日本心身障害児協会
島田療育センター


〒206-0036
東京都多摩市中沢1-31-1
TEL(042)374-2071(代)
担当/療育部

http://www.shimada-ryoiku.or.jp/

ryoikubu@shimada-ryoiku.or.jp

発語でのコミュニケーションが難しい重症児者への看護・支援

重症心身障害児(者)の看護は、小児、成人、高齢者とは違い、疾患そのものの理解と同時にその疾患による身体の変形や拘縮などから引き起こされる二次的障害を十分に理解したうえで、基本的な援助方法を身に付け、さらには成長・発達段階に見合った看護が必要となる。また、対象者の中にはコミュニケーションを言葉でとることが困難な方も多く、普段とは違う表情や動作を感じ取り、それを看護へとつなげる力が求められる。学校の教育課程には、『重症心身障害児(者)の看護』の教育・実習時間は設けられていないことが多く、入職者のほとんどが1年目の基礎教育によって、特殊性のある看護を理解し身に付ける。

座学と演習を交えながら、実体験することで看護の特殊性を理解する

新人教育は、『基礎研修』『技術研修』『コミュニケーション研修』が4月から始まり、その後プリセプターシップにより一人ひとりに合った指導を行いながら、『3ヵ月、6ヵ月研修』で知識や技術を確認し、時には自分の看護を振り返り、現場での疑問や悩みを解決していく形となっている。そして翌年2月には『振り返りと今後の課題』と題したレポートを作成し、2年目へ向けた目標を設定する。特に基礎研修では座学と演習を交えながら、実体験を通して感性を養っていくことに重点が置かれている点が特徴である。例えばヨーグルトを口を開けて飲む、おむつの当て方を学ぶなど、身をもって体験することで重症児者の理解につながるのだという。

1年目はコミュニケーションがとれることを目標に

新人看護師の1年目では、重症児者とコミュニケーションがとれるようになることを目指している。重症児者の一番近くにいて、その方を理解できるのは看護師である。時には療育チームであるリハビリスタッフ、栄養士、助手さんなどと連携しながら、その方のわずかな変化を探り出すこともある。日常のケアと日中の余暇活動を通して、重症児者から笑顔が生まれたり、楽しそうにされている姿を見たりすることで、自分の行ったケアが手応えとして返ってくることがやり甲斐につながるという。看護師はどんなケアをする時でも、声をかけ、自分の声と手を覚えてもらうことが大切だ。そして、少しずつ重症児者のことがわかり、ニーズの把握ができるようになる。

Study 1

事故防止研修

危険な場面を想定し考える力を養う_事故防止研修

医療事故についての一般的な知識と事故発生時の報告の仕方から始まる研修。その後危険予知トレーニング(KYT)を実際に行い、どんな点に気を付けたらよいかを学ぶ。研修の中では、ヒヤリハットとは別に『事故報告書』の位置づけや書き方を通して、次に同じことを起こさないように促している。危険予知トレーニングでは、車椅子のストッパーのかけ方やバス移動時の注意点など、実際の写真を見て、そこからどのような危険があるのかを考えるなどの工夫を凝らしている。

Study 2

コミュニケーション研修

相手の立場に立ち、思いをくみ取る_コミュニケーション研修

看護師にとって最も重要な『コミュニケーション』の研修を1年目できっちりと行っている。3〜4名のグループに分かれ、重症児者役の人に『お題』が渡され、同じグループの参加者がお題にあるニーズをくみ取る研修内容となっている。例えば、重症児者役の人は、事前に目が見えない、言葉が話せない、右手しか使えない等の設定のもと、「水が飲みたい」「車椅子に乗ってお散歩に行きたい」等のニーズを、表情、視線など身振り手振りでグループの人に伝える。それらが通じたら終了となる。参加者からは大変、好評のようだ。

Study 3

KOMI研修

療養チームが同じ視点をもつ_KOMI研修

ナイチンゲールの思想をベースに構築されたKOMI理論を用いた研修。同センターでは、重症児者のケアを療養チーム(看護師・介護福祉士・保育士・児童指導員等多職種で構成)で行っていることから、同じ視点をもってケアプランを立て、実施していくためにKOMI理論を取り入れている。1年目の基礎研修では、KOMI理論の考え方、チャートのつけ方、記録の仕方等を学ぶ。

先輩からひとこと

山口 佳乃美さん
渡部 華穂さん
'15年4月入職
7病棟勤務
難しいから面白いし、手応えを感じられる
重症心身障害児(者)看護

学校では重症心身障害児(者)の看護は実習がなく、施設見学だけだったので、入職して基礎から学んでいます。身体的な特徴や疾患の知識、ケアに必要なことを集合研修やOJTを通して丁寧に指導してもらえます。利用者さん(重症児者)は表情や脈拍、アラーム等で訴えたいことを教えてくれます。それが何のことなのかを感じ取れるようになるために、先輩の手を借りながら、毎日、利用者さん(重症児者)と向き合っています。確かに難しい領域ですが、私のケアによって利用者さん(重症児者)から笑顔が生まれた時はやりがいにもなりますし、知らないことが分かるようになることは、自分の成長にもつながり、嬉しくもあります。

Step up 研修

海外での新たな発見がある海外研修
毎年1回、5日間の日程で、選抜された希望者(全職員)を対象とした海外研修を行っている。『海外で障害を持たれた方がどのように生活をされているのか』など、参加者が研修の目的をそれぞれもって参加する。実際に目で見て、耳で聞いて、肌で感じた日本と海外での重症児の生活の違い、共通点などの新たな発見を持ち帰り、センターの職員へ還元もする。

海外研修

プロフェッショナルナース育成研修
重症児看護に3年以上携わった看護師を対象とした院外研修。東京都主催で月1回ずつ、2年間の研修となる。疾患や制度など基本的なことから訪問看護や他施設での実習、看護研究までを行う。他の重症児施設の看護師、訪問看護師と一緒に研修を受けるので、情報交換などもでき、絆が深まるという。ステップアップ研修の一つとなっている。

プロフェッショナルナース育成研修

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