Report1
『ナラティブ』とは
ナラティブとは『物語、話』と訳され、ナラティブ・アプローチは『物語をとおして自分を見る、語りをとおした人間の理解の方法』と言われている。
目的
患者さんとの関わりを言葉にすることで自分の看護を振り返り、あらためて看護の本質やおもしろさ、奥深さを感じ、自己の看護観を深める。相手を思いやり、尊重し、誠実な対応のできる看護師を育成する。
メリット
患者さんとの関わりや自分の行った看護を言葉で表現することで再認識でき、看護を主体的に考えられるようになる。また、他者の語りを共有し自分の看護に活かせる。
東邦大学医療センター大森病院
kankihonbu@jim.toho-u.ac.jp
ナラティブの要素を研修に取り入れ、臨床の知を育てる。
ナラティブという言葉が医療の世界で注目され始める以前から、東邦大学医療センター大森病院では、看護の語りを師長や主任の研修に取り入れてきた。2007年度からは『ナラティブ研修』と題し、『ナラティブ講演会』と『語りの体験研修』を看護師全体向けに毎年開催している。ナラティブアプローチについて理解するだけでなく、心に残る患者さんとの関わりを言葉にすることで自分の看護を振り返り、看護の本質やおもしろさ、奥深さを感じ、看護観を深める。そして看護の経験の積み重ねを『臨床の知』として再確認することが目的。
仲間や先輩の語りを共有し新たな目標設定の一助に。
ナラティブ講演会には、毎年100名以上の参加者があり、『語りの体験研修』には、毎年約30名がエントリーしている。研修終了後の参加者のアンケートには、「この仕事をしていてよかった」と思えた、などの前向きな感想が多い。これまで見過ごされがちだった医療的ケア以外の部分での患者さんとの関わりを自分の言葉で表現することで看護観が形成され、主体性を持った看護師の育成に繋がっている。今年は師長の参加があり、入職して4~5年目の事例を語っていた。このことは、若い看護師たちが将来像を描くことに役立っている。
Study 1
講演を聴き自分の看護体験をまとめて発表する。
佐藤紀子氏(東京女子医科大学看護学部大学院教授)を招いて、『ナラティブとは』『語りの意味』等についての講演を年1回開催。この受講者のうち希望者は、次のステップである『語りの体験』研修に向け、患者さんとの印象に残っている場面を振り返り、物語風の文章にする。そして研修当日、20分の持ち時間の中で語る。Study 2
語りを聴いての感想や意見を出し合う。
語りを聴いて肯定的なフィードバックや感想などを出し合うグループワークが行われる。自分の語りに対する客観的な意見や感想は、患者さんとの心に残るやりとりの意味を見出すことや、自分のよい面を発見するきっかけとなっている。互いの経験を共有することは、個々の看護の引き出しが増えていくことにもつながる。Study 3
『語りの体験』研修全体を振り返る。
自分の体験を文章にし、自分が語っての気づきや感想、他者の語りを聴いた感想などをグループで話し合い発表する。語りを参加者全体で共有することで、語った意味や他者の語りから得たものを再確認する作業となる。各自が紹介した事例は、ナラティブ事例集として冊子に収録され、受け継がれる。先輩からひとこと
浅野優葉さん
'10年4月入職
消化器外科病棟勤務
振り返りから気づきが得られ、今後に活かせる
看取りをさせていただいた患者さんとの関わりについて書いていくうちに、患者さんから学ばせていただいたことの多さに気づきました。また、語りの後に自分では意識していなかったよい関わりを気づかせてもらったことが励みになりました。自分の看護をじっくり振り返る機会はなかなかないので、貴重な機会だと思います。
看護部主催 ランチョン交流会
看護職員の声を直接聞くことや看護部の方針を伝える機会。昼食を摂りながら、病院の方針や看護部の考え方・取り組みを紹介する。現場で働いている職員の声を聞き、より良い職場環境にするにはどうしたらよいか共に考える場となっている。
FISH!研修
『FISH!哲学に学ぼう』研修が行われている。これは、楽しく・生き生きと仕事するために、仲間とどういう姿勢で仕事に向き合うか、作品作りをとおして『仲間意識』『協働の楽しさや大切さ』『目標を達成することの喜び』を体感することをねらった研修。日々の看護や人間関係作りに役立っている。