Report7
『シミュレーション』とは
ある仕組みや場面を仮想的な方法で模擬動作させること。教育の一環として行う場合、模擬訓練の意味で使われることが多い。
目的
日々の看護実践を振り返るとともに、看護実践力を高めるために、自分がどのように看護に関わるのかという思考を養う。
メリット
実践に即した内容となっているため、臨床で似た場面に出合っても落ち着いて行動ができる。また、チームワークの育成にもつながる。
東京医科大学病院
http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/
s-kango@tokyo-med.ac.jp
シミュレーションセンターを活用し体験型の教育を
座学で得る知識と実際に身体を動かす体験が、より現場での実践力を高めるという考えのもと、東京医科大学病院では病院全体で体験型の教育に力を入れてきた。全職員対象のCPR+AEDの研修にシミュレーションを取り入れたのもその一つ。2010年には、教育研究棟には東京医科大学病院シミュレーションセンター(クリニカル・シミュレーション・ラボ)が設置され、充実した環境の中で、チーム医療を念頭に置いたさまざまな演習が行われてきた。看護部でも、中央研修と現場がスムーズにつながる研修を目指し、シミュレーションを教育計画に多く取り入れている。
臨床で何に戸惑う時期なのかを捉えた教育計画
新人教育では、全体研修のほか、臨床現場に入ってからも現場特有の場面設定をしたシミュレーション研修が多数企画されており、新人看護師が抱きやすい不安や疑問を模擬的に再現しながら払拭し、知識と技術を統合していく機会となっている。2年目以降の看護師に対しても、場面設定をより高度にした『リーダーの立場で動くためのシミュレーション研修』を用意している。一方では、各病棟で身近な題材を用いたシミュレーション研修を企画・実行する指導者の育成にも力を入れている。シミュレーションを通して現場での思考プロセスを体験することで、根拠を持った安全な看護を提供できる看護師を育てていきたい考えだ。
Study 1
新人が現場で戸惑うことの多い『申し送り』
申し送りは、限られた時間で何を伝え、何を省くべきなのかという情報の整理と、伝え方が大切だが、OJTだけでは適切な方法が身に付くのに時間がかかってしまう。そこで、1年目の6月に行われる集合研修の中で、コミュニケーションゲームでウォーミングアップをし、次に患者さん役を用意して夜勤者への申し送りのシミュレーションを行う。Study 2
急変時の対応を、段階を追って体験する
7月には、夜勤時に呼吸困難を訴える、自分の担当外の患者さんへの対応を、シミュレーションしながら学ぶ。日勤帯より看護師も少ない中での報告・相談を経験することで、新人が安心して夜勤に臨むことにつながる。また、1月には急変した患者さんへの対応研修も実施。こうして徐々に難易度を上げ、新人の自信を育てていく。Study 3
継続してアセスメント能力向上を目指す
2年目以降には、同じ病態の患者さんのシナリオでも、フィジカルイグザミネーションの技術を使って観察することを求めるなど、経験年数に応じた課題を設定していく。さらに、指導者となる層は、シミュレーション教育の専門家でもあるシミュレーションセンター長の阿部幸恵教授の協力のもと、研修時に使用するシナリオ作成などにもチャレンジする。先輩からひとこと
山口 佳乃美さん
'12年4月入職
循環器内科病棟勤務
充実の体験型研修で不安を払拭できた
当院は、大学病院なので教育制度は充実していると感じています。学生時の病棟実習では学ぶ機会のなかった技術を、シミュレーションしながら一通り学ぶことができ、不安の解消になりました。そして看護実践にスムーズに入ることができました。研修によっては、看護師だけでなく多職種の方と一緒に研修を受けられるのも新鮮です。
音楽の癒し効果を研修に
忙しい勤務の合間を縫って研修に参加する看護師たちのために、研修開始前にはリラックスできる音楽を室内に流している。気分を切り替え、楽しんで研修に臨むことができると好評だ。義務ではなく自発的に学べるようになると、得る物も多くなるはず!
宿泊研修で絆を深める!
1年目の6月に行われるフォローアップ1は、宿泊型の研修になっている。基礎技術を学ぶなどの勉強だけでなく、夜には懇親会があったり、温泉に入ったりと、同期や指導係の先輩たちとリフレッシュしながらコミュニケーションを深められる。